急性呼吸窮迫症候群

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なすび医学ノート

acute respiratory distress syndrome;ARDS

敗血症や重症肺炎,胃内容物の誤嚥などの種々の基礎疾患や外傷に続発して発症し,高度な炎症に伴って肺胞隔壁(血管内皮・肺胞上皮)の透過性が亢進することによる肺水腫(非心原性肺水腫)を特徴とする急性呼吸不全.

発症1週以内に5cmH2O以上の陽圧換気下でPaO2/FiO2≦300Torrの低酸素血症を呈し,胸部X線で両側性陰影があり,心不全や輸液過剰のみでは説明がつかない肺水腫.
(ベルリン定義 Berlin definition)

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

疫学

重症度別(ベルリン定義)の観察研究では,院内死亡率は,軽症で34.9%,中等度で40.3%,重症で46.1%. LUNG SAFE研究

原因

直接損傷に加え,間接損傷を誘因として発症する.

直接損傷

重症肺炎や胃内容物の誤嚥,溺水といった呼吸器系に直接刺激が加わる病態.

肺上皮傷害の指標であるサーファクタント蛋白D(surfactant protein D;SP-D)が高い.

間接損傷

敗血症や膵炎,外傷といった呼吸器系へ直接刺激が加わらない病態.

血管内皮傷害の指標であるアンジオポエチン2(angiopoietin-2)やフォン・ヴィレブランド因子(von Willebrand factor)が高い.

病態

好中球主体の炎症に伴う透過性亢進型肺水腫

症候

患者が急に強度の呼吸困難を訴え,マスクなどの酸素投与でも改善しない低酸素血症があり,胸部X線で両側性陰影を認める場合には疑う.
→左心不全や過剰輸液が否定されたら,ARDSと考えて治療・呼吸管理を開始する.

症状

急性に発現する呼吸困難が典型的であるが,さまざまな誘因として発症するため,基礎病態によって左右される.

理学所見

特異的なものはない.

断続性ラ音を聴取することが多いが,明らかでないこともある.

胸部X線

両側性の浸潤影.
*病初期や脱水が顕著な場合は陰影が明らかでない場合がある.

動脈血ガス

肺胞気・動脈血酸素分圧較差(A-aDO2)の開大を伴うPaO2の低下がみられる.

PaCO2は病初期には低下していることが多いが,進行して換気障害を伴うようになると上昇する.

多臓器不全の発現が予後を左右するため,組織循環不全の指標となる血中乳酸値のモニターが有用.

胸部CT

仰臥位で撮影した場合,腹側はほぼ正常な画像であるのに対し,背側は浸潤影が主であり,その中間部分はすりガラス影陰影になっている.
→血管内静水圧の違いによる肺水腫の分布の偏り,肺自体の重力の影響による肺虚脱の両者を反映している.

診断時に線維増殖性変化による肺の容積減少を示唆する気管支拡張がみられる症例では,人工呼吸器からの離脱が困難で予後も不良.

診断

ベルリン定義

急性発症
明らかな誘因または呼吸器症状の出現または悪化から1週間以内

胸部画像(単純X線/ CT)
両側性陰影(bilateral opacities)(胸水,無気肺,結節のみでは説明できない)

肺水腫の原因
心不全や輸液過量のみでは説明できない(可能なら心エコーなどの客観的評価が必要)

酸素化障害
軽症:200mmHg<PaO₂/FIO₂≦300mmHg(PEEP or CPAP≧5cmH₂O)
中等症:100mmHg<PaO₂/FIO₂≦200mmHg(PEEP≧5cmH₂O)
重症:PaO₂/FIO₂≦100mmHg(PEEP≧5cmH₂O)

呼吸管理

ARDSの治療の中心であり,酸素化障害の程度に応じてさまざまな呼吸管理法が選択される.

ARDSにおける酸素化障害には拡散障害や換気血流比の不均等分布も寄与しているが,主たる要因は肺内シャントの増加.

高濃度酸素を吸入させてもARDSの低酸素血症は改善が乏しく,陽圧換気により虚脱した肺胞を開放させることが重要.

肺保護的人工換気

肺胞の過度な伸展を避けるため一回換気量を低く設定し,肺胞の虚脱と再開放の反復を回避するためPEEPを高めに設定する.

人工呼吸器管理に伴う人工呼吸器関連肺障害(ventriculator-associated lung injury;VALI)が問題となるため,VALIを最小限にすることを目的として推奨されている.

本邦のガイドラインでは,以下を推奨している.
1)一回換気量を6~8mL/kg(予測体重)に設定する
2)プラトー圧が30cmH2O以下となる範囲内,および循環動態に影響を与えない範囲内でPEPPを設定し,特に中等度以上の患者では高めのPEEPを用いる.

腹臥位換気

ARDS患者の胸部CTでは陰影が荷重部(仰臥位であれば背側)に局在することが多く,肺水腫により重量が増した肺自体の圧迫により広範な肺胞の虚脱が生じると考えられている.

腹臥位にすると換気血流比の改善が得られ,仰臥位に比べて腹腔内臓器による横隔膜への圧迫が軽減する.

ただし,気道管理や圧迫潰瘍,神経損傷などに注意が必要で,熟練したスタッフの確保が必須.

非侵襲的陽圧換気 non-invasive positive pressure ventilation;NPPV

気管挿管下の人工換気が原則であるが,マスク装着で陽圧換気を行う非侵襲的陽圧換気も行われる.

NPPVは酸素化を改善し,呼吸困難や呼吸筋への負荷を軽減する.

軽症例や全身状態が良好な症例では挿管を回避できることも少なくないが,NPPV開始後1~2時間で改善傾向がない場合,開始後4~6時間でNPPV施行前に設定した目標に達しない場合には挿管管理へ移行する.

体外式膜型人工肺 extracorporeal membrane oxygenation;ECMO

VALIの予防の観点からは最も有効な手段であるが,患者選択を含め,今後さらなる検討が必要.

薬物治療

さまざまな薬物治療が試みられてきたが,大規模臨床試験で生命予後の改善効果が証明されたものはない.

副腎皮質ステロイド

有効性については長年検討されてきたが,生命予後の改善効果は示されていない.

メチルプレドニゾロン換算で2mg/kg/day以下の比較的低用量に限れば院内死亡の減少や人工呼吸器からの離脱が期待でき,感染発生率の増加の懸念も少ない.
→ガイドラインでは,メチルプレドニゾロン(1~2mg/kg/day相当)の使用を提案(弱い推奨)している.
*パルス療法のような大量投与は推奨されない.

抗菌薬

ARDSの基礎疾患として肺炎や敗血症などの感染症が多く,また経過中に人工呼吸器関連肺炎などの感染症を合併すると予後不良
→広域スペクトラムのβ-ラクタム系抗菌薬に加えて,マクロライド系orニューキノロン系抗菌薬が投与されることが多い.

なすび医学ノート
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なすび院長

医療に疲れ、現場から離れたどろっぽ医ε- (´ー`*) フッ
ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
医学勉強などの日々のことをまとめています。
なんちゃって内科・糖尿病・腎臓病専門医です!(゚∀゚)

健康が一番の節約になる!これがモットー。
健康のためには、「自分を大切にすること」「生活習慣を見直すこと」「健診を受けること」が3本柱です!

妻:りんご夫人
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事務長:かえる

もう少しで3児の父。とにかくかわいいε- (´ー`*)
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