急性前骨髄球性白血病(APL)

医学ノート(なすび用)

acute promyelocytic leukemia;APL

現在の急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia;AML)治療では,APLとAPL以外のAMLに分けて対応するという基本スキームがとられている.

APLは全例に15番と17番染色体相互転座とその結果としてPML-RARA融合遺伝子形成がみられる.
他のAMLと異なり,DICによる全身性の出血傾向を伴うことが多い点がAPLの特徴.

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病態

融合遺伝子を形成するRARA遺伝子は,レチノイン酸(retinoic acid;RA)受容体αをコードしており,融合遺伝子形成に伴うその機能異常がAPLの病態に深く関連している.

融合蛋白となったRA受容体は生理的濃度のRAには反応しなくなっているが,薬理量の全トランス型RA(all-trans RA;ATRA)に対しては部分的に機能を回復し,ATRA投与後はAPL細胞が分化しアポトーシスが誘導されて死滅する.

症候

症状

白血病細胞により正常造血の抑制を来たし,貧血,感染症,出血が主な症状.

他のAMLと異なり,DICによる全身性の出血傾向を伴うことが多い点がAPLの特徴.
・皮下出血に加え,歯肉出血,過多月経,痔出血,抜歯後止血困難,鼻出血,網膜出血,頭蓋内出血などを初診時に認める.

動悸や息切れ等の貧血症状や発熱,倦怠感もある.
・発熱は感染症の合併例もあるが,腫瘍熱に由来する場合も多い.

血液検査

貧血,血小板減少を大半の症例に認める.

白血球数は減少することが多いが,正常・増加例もある.
・白血球数中央値は2,000/μl前後で,6割は汎血球減少を呈する.
・白血球10,000/μl以上の増加例は約1/4.

白血球数に応じ,LDHや尿酸の上昇を認める.

APLでは線溶過剰型のDICを併発する.
・感染症に由来する線溶抑制型のDICと異なり,フィブリノゲンやα2プラスミンインヒビターが低下し,アンチトロンビンⅢは低下しない.

骨髄検査

末梢血液 or 骨髄検査で芽球や異常前骨髄球の増殖を認める.

典型例の異常前骨髄球はアズール顆粒が豊富で核異形成を伴いFAB分類のM3にあたる.

アウエル小体を多数有するFaggot細胞の出現が特徴的.
・APLの1割前後にアズール顆粒が細かく光学顕微鏡で顆粒を識別できない前骨髄球からなる亜型があるため,注意を要する(FAB分類のM3v).

遺伝子検査

細胞形態からAPLと診断した症例の92%に(t 15;17)染色体転座を認める.

挿入や複雑核型等も合わせて,98%に(t 15;17)に由来するPML-RARAキメラ遺伝子が陽性.

なすび院長
なすび院長

APLを疑った場合,FISH法 or RT-PCR法により,PML-RARAを早く同定することが重要

診断

骨髄検査で芽球や異常前骨髄球を20%以上認めれば,APLと診断できる.
*M3vの診断は形態的には困難な場合が少なくないため,その存在を念頭に置く.

M3vもt(15;17)陽性であり,白血球高値例が多く,DICが強い傾向にある.

治療

ATRAを用いた白血病細胞のPML-RARαキメラタンパクに対する分化誘導療法が開発され,著しい治療成績の向上が得られた.

最近では,分化誘導能がさらに強力なATRA誘導体も導入され,APLの長期生存は90%近くに至っている.
・70歳未満の未治療APLのATRAと化学療法による完全寛解率は94%.
・非寛解の主因は,臓器出血やAPL分化症候群による早期死亡.

APLの予後因子は,年齢と治療前白血球数.

全トランス型RA all-trans RA;ATRA

ATRAはRARαに結合してコリプレッサーを解離し,ATOはPMLへ結合して,それぞれキメラタンパクを破壊することにより,分化の停止を解除し,APL細胞を分化させて,DICを増強させることなく,寛解へ導入し得る.

APLの治療の第一目標は,寛解導入療法により完全寛解へ導入する.
寛解後治療としての地固め療法は長期生存に必須であり,治癒を最終目標とする.

寛解導入療法

標準的な寛解導入療法は,ATRAと化学療法の併用療法.

治療前白血球数や治療途中の白血球の増加に応じて,ATRAに化学療法としてイダルビシン(idarubicin:IDR)とシタラビン(cytarabine:Ara-C)の併用療法を行う.

地固め療法

地固め療法として,アントラサイクリン系とAra-Cの併用による地固め療法を3コース行う.

地固め療法後の骨髄抑制期にはG-CSF(granulocyte-colony stimulating factor)製剤を使用する.

地固め療法の開始前に少なくとも一度Ara-C,メトトレキセート,プレドニンの髄注を行い,髄膜浸潤を予防する.

合併症対策

凝固異常対策

APLの非寛解の主因は,DICによる脳出血などの臓器出血.

線溶過剰型のDICでは,凍結血漿によるフィブリノゲンと血小板の補充を十分に行うことが重要.

血小板輸血により,初発時等のDICが強いときには,血小板数30,000~50,000/μL以上を保つ必要がある.

フィブリノゲンを150 mg/dl以上に保つようにする.

抗がん薬の併用時にDICは悪化するため,凍結血漿による輸注を予め行うように計画する.

トロンボモジュリン製剤等の抗凝固薬も適宜使用する.

中心静脈カテーテル留置等の観血的処置はDICが強い病初期には控えた方がよい.

APL分化症候群(以前はATRA症候群)

APL細胞が分化増殖して肺や腎に浸潤し,炎症性サイトカイン血症を引き起こすことにより,発熱,呼吸困難,低血圧,体重増加,肺浸潤影,胸水/心囊液貯留,腎不全などを呈する重篤な病態

寛解導入療法中の20%前後の症例にみられる.
ATRAやATOの使用時にAPL細胞の分化成熟に伴って発現することが多いが,治療開始前にも認めることがある.

他の原因なく,7項目中3項目満たせば臨床診断されるが,病像の完成を待っていては重篤化するため,1項目でも出現すれば,疑って早期に治療を開始した方がよい.

APL分化症候群に対して副腎皮質ステロイドホルモンが著効する.
重篤な場合はATRAを休薬し,改善を待って慎重にATRAを再開する.

貧血・感染症対策

年齢や全身状態,治療経過により赤血球輸血の基準は異なるが,Hb 7 g/dL以上を保つ.

感染症の予防も必須であり,手洗いとうがいに加え,無菌室やクリーンベッドを可能な限り使用する.

抗菌薬の予防投与は施設によって異なるが,イトラコナゾールの内用液等による真菌予防が一般に行われる.

医学ノート(なすび用)
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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

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