急性膵炎 acute pancreatitis

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

図表は以下の文献より引用
日内会誌2013;102:2363-2369

○膵炎は非細菌性の炎症であり,活性化された膵の酵素(トリプシン)が組織間隙に逸脱し,膵組織の自己消化を呈するために起こると考えられている.
○急性膵炎は膵酵素の活性化による自己消化であり,炎症が膵局所に留まる軽症と,重症では傷害された膵実質から多量の炎症性mediatorが放出され多臓器不全や全身性炎症反応症候群(SIRS:systemic inflammatory response syndrome)を併発し,腸内細菌の移行による重症感染症を合併することがある.

疫学

○本邦の2007 年1 年間の急性膵炎患者数は57,560 人と推定され,患者数は10 年前に比べ
約3 倍に増加している.
○男女比は2:1 で男性に多い.
○成因は男性ではアルコール性が42.7%,胆石性19.2%,特発性12.4% であるが,女性では胆石性が35%と最も多く,次いで特発性25.1%,アルコール性は9.1% と少ない.
 他に内視鏡的逆行性胆道膵管造影検査(endoscopic retrograde cholangiopancreatography;ERCP)や乳頭処置後,薬剤性,膵胆道合流異常,遺伝子異常などがある.
○急性膵炎のうち重症は約20% で,重症急性膵炎の致死率は約8% と高く厚労省難病指定疾患に指定されている.

病態

○急性膵炎は様々な原因で膵実質内で活性化した膵酵素(トリプシン)による自己消化が主たる病態で,膵や周囲組織に浮腫,壊死,出血などが生じる.
○軽症では炎症が膵周囲にとどまり速やかに回復する.
○重症では傷害された膵実質からサイトカインなどの炎症性mediatorが大量に血中や腹腔内に放出され,ショック,腎不全,呼吸不全などの多臓器不全やSIRS,播種性血管内凝固症候群(DIC)が次々と引き起こされ,致死的な病態に進展する.
○重症急性膵炎死亡の約20%が発症後1 週間以内であり,早期合併症としての多臓器不全が死亡原因.
○重症死亡例の約50% は発症後4 週間以降の重症感染症が主体となる後期合併症が死因となる.
←長期に持続する炎症による免疫能の低下や腸内細菌の病巣への移行(bacterial translocation)が,致死的な重症感染症(感染性膵壊死,膵膿瘍,敗血症)を誘発するため

診断

臨床診断基準

①上腹部の急性腹痛発作と圧痛
②血中,尿中あるいは腹水中の膵酵素の上昇
③画像で膵に急性膵炎に伴う異常
の3 項目からなり,2 項目以上満たし,他の膵疾患や急性腹症を除外した場合,診断する.

重症度判定

○予後予測と治療戦略決定のために極めて重要.
○原則として入院48 時間以内に判定し,以後は経時的に判定する.
○軽症例が経過中に重症化することもあるので注意を要する.

・予後因子として重篤な臨床徴候・血液検査項目に加え,SIRS症候陽性,高齢者(70 歳以上)は予後不良因子.
・重症度判定は造影CT像からも可能で,炎症の膵外進展度と膵内の造影不良(壊死や血流低下)域の組み合わせによりGrade分類される.
・各陽性項目の加算した点数を重症度スコアとする.

治療

○発症早期の初期治療が極めて重要で,急性膵炎診療ガイドライン2010に準じ適切に治療を行う.
○重症と判定されたらICU管理が可能な高次医療機関へ速やかに転送する.

膵外分泌の抑制

1)絶飲絶食
2)胃管の挿入:胃液を吸引する。
3)胃液分泌抑制(H2 blocker)

鎮痛

・急性膵炎の激しい疼痛には非麻薬性鎮痛薬を適宜筋注する.
・麻薬性鎮痛薬はOddi括約筋を収縮させるため単独使用はしない.
1)臭化ブチルスコポラミン(ブスコパン® 1A)
・鎮痛と同時にOddi括約筋の収縮をとる
・1A 6時間ごとに静注する。
2)塩酸ペンタゾシン(ペンタジン®,ソセゴン®)15~30mg筋注
・1~2回にとどめる。

輸液

・急性膵炎では初期輸液が極めて重要であり,早期より細胞外液類似液を中心に十分量の輸液を行う.
・多量の浸出液による循環血漿量の減少が重症化の一因になることもある.
・輸液量は循環動態や尿量,中心静脈圧に応じて増減するが3,000 mL以上は必要で,時間尿量1 mL/kg以上を目標にする.
・最初の8時間で1日予定量の半分くらいを投与.

抗菌薬

・軽症例では必要ないが,重症例では感染予防のためグラム陰性桿菌に感受性が高く,膵移行の良いものを投与する.スルペラゾン®
・腸管の細菌増殖を防ぐために経腸的に抗菌薬を投与する選択的消化管除菌(selective digestive decontamination:SDD)が早期に行われることもある.

蛋白分解酵素阻害薬

・蛋白分解酵素阻害薬(メシル酸ガベキサートあるいはメシル酸ナファモスタット)を24時間持続で静脈投与する.
・重症例では発症早期にDIC用量で投与し,以後,適宜漸減する.

重症例における特殊療法

・持続的血液濾過透析は血中サイトカインの除去と腎不全に有効である.
・動脈カテーテルから膵局所に蛋白分解酵素阻害薬と抗菌薬を持続投与する動注治療(保険適応外)が行われることもある.

経腸栄養

・軽症は数日で経口摂取が可能となるので特別な栄養療法は必要ない.
・重症例では腸内細菌の増加による細菌移行から重症感染症を併発しやすい.
・経腸栄養は腸管免疫機能を維持し感染発生を抑制することが期待される.
・成分栄養剤を全身状態が安定し麻痺性イレウスが軽快したら早期に始めることが推奨される.

胆石性膵炎

・総胆管結石による急性膵炎で急性胆管炎や胆道通過障害が確認されたら,緊急内視鏡的胆道ドレナージを要する.

外科治療

・外科治療の適応は後期合併症である感染性膵壊死で,ネクロゼクトミーが行われる.
・膵膿瘍や腹腔内膿瘍に対しては経皮的ドレナージが行われる.



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