急性腎障害 acute kidney injury;AKI

スポンサーリンク
なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

急激な腎機能低下を伴う病態.

急性腎不全(acute renal failure;ARF)に変わる新たな疾患概念として,提唱された.
→ARFは長期的な生命予後・腎予後には影響しないと考えられていたが,近年,急性の軽微な腎機能障害が長期予後に大きく影響することが広く認識されるようになった.

acute on chronic:慢性腎不全の経過中の急性の腎機能増悪

acute kidney diseases and disorders(AKD):比較的急速な腎障害の進行は認めるが,AKIの定義に当てはまらず,慢性腎臓病(CKD)にも当てはまらない状態.

なすび院長
なすび院長

中長期的に適切なアプローチを行わないと,その後,数年に亘っての腎予後が悪化することが認識されるようになっている.

疫学

AKI発症1年以降の生命予後と腎予後は,いずれも不良. BMJ Open. 2015; 5(1): e006497

推定AKI人口発生率は100万人あたり2,147人と報告されている. Clin J Am Soc Nephrol. 2013 Mar;8(3):476-83
・10~15%は関連する急性疾患の過程で死亡,3~15%は関連する急性疾患の過程で死亡,残りの20~50%はCKD第4期に移行すると報告されている.

リスク因子

AKI における一般的なリスクとして,AKI 発症前の腎機能障害・蛋白尿のほか,加齢や人種,性別,高血圧や糖尿病などがある.

慢性腎臓病

患者全体における解析では,AKI発症前の腎機能障害が高度になるにつれ,AKI リスクは増加した.

尿蛋白に関しても,尿蛋白の増加に伴いAKI リスクは増加しており,腎機能障害・尿蛋白による影響は相乗的にAKIのリスクに関与していた.

加齢や人種,性別,高血圧や糖尿病は,AKIのリスク因子となるが,ある一定の腎機能障害・蛋白尿の条件においては,その影響が減弱する.
→腎機能障害や蛋白尿は,AKIの強いリスク因子であり,CKDを有する症例では特にAKI の予防・早期発見に備えた注意深い対応が必要.

原因

腎臓への血流が低下する腎前性,腎臓実質そのものに障害がある腎性,尿路の狭窄・閉塞によって引き起こされる腎後性に分類される.
→AKIの原因の約50~80%は腎前性.

敗血症性AKI sepsis-associated AKI;SA-AKI

敗血症は,AKIをきたす最も頻度の高い病態であり,50~60%の症例においてAKI が発症するとも報告されている.
・RRTを要するのは20~30%程度.
AKI発症に伴い死亡率も有意に増加することが報告されている.
・RRTを要する敗血症の死亡率は50~60%.

危険因子

AKI発症前の腎機能障害は,敗血症においてもAKI発症のリスクとして報告されている.

病態

虚血や過剰炎症,うっ血,薬剤などの中毒障害など,さまざまな要因で腎障害が生じる.

低血圧や腎血管収縮が原因で生じる腎虚血による急性尿細管壊死(ATN)といった構造的変化が主体と考えられてきたが,実際の組織像では,炎症に関連する微小血管や尿細管の機能的変化が主体と考えられている.

腎の血行動態では,GFRを規定するのは腎血流量ではなく,輸入細動脈・輸出細動脈の拡張(相対的に輸出細動脈の拡張が大きい)が原因と考えられるようになっている.

血中で増加した炎症性サイトカインのみならず,エンドトキシンに代表される病原体関連因子パターン(pathogen-molecular patterns;PAMPs),死細胞から放出されるダメージ関連分子パターン(damage-associated molecular patterns;DAMPs)などが糸球体で濾過される.
→近位尿細管細胞のToll様受容体によって認識され,過剰な免疫応答が惹起される.

→血管内皮では,細胞と細胞の接着が失われ,細胞外マトリックスが破壊される.

尿細管周囲毛細血管内では,好中球や単核球を主体とした炎症性細胞の浸潤が開始し,尿細管周囲毛細血管からも炎症が波及して尿細管上皮を障害する.

間質の早期の変化として,障害された尿細管周囲に浮腫像が広がる.
→障害が遷延すると,間質の線維化が徐々に進展し不可逆的な変化となっていく.

障害の程度が強い場合には,尿細管上皮が脱落し,遠位系の尿細管管腔内でTamm-Horsfall蛋白も含む顆粒円柱が形成される.

心不全に伴うAKI

心疾患と腎疾患は密接に関わっており,相互に障害される病態を総称して心腎症候群(cardiorenal syndrome;CRS)と呼ばれる.

急性心不全の治療が奏功しているときの血清Cr値の上昇は,主にうっ血解除による血液濃縮を反映し,利尿薬反応性と関連し,患者の予後は良好とされ,許容されるものと考えられている(pseudo-WRF/AKI).
・利尿薬抵抗性は死亡率と関連.

CRS type 1型におけるAKI

発症率は20~40%と高く,生命予後への影響なども知られており,リスク因子を把握することは重要.

→AKI 発症前の腎機能障害,加齢,心機能低下などが発症リスクとして同定されている.

AKIが発症する機序としては,心不全に伴う腎血流の低下とうっ血,それに付随する交感神経系,レニン-アンジオテンシン・アルドステロン系の活性などが知られている.

心不全を呈する患者の多くは高齢者,動脈硬化病変を多く持ち,RAS阻害薬を内服している状況があり,腎血流の自己調節能が破綻
→少しの平均血圧の低下で容易にAKIを発症するnormotensive AKI(正常血圧AKI)と呼ばれる状況が起こりやすい.

うっ血腎

急性心不全時の中心静脈圧が大きくなればなるほどAKI発症率が増加する.

腎うっ血になると,水分の血管外漏出がおこり,腎間質に浮腫が引き起こる.
→腎内細動脈を圧迫することにより糸球体圧を低下させること,さらに圧迫されたボウマン嚢はその内圧が上昇し,GFRが低下する機序が報告されている.

超音波で,肝静脈・門脈・腎静脈血流の血流波形パターンから変化を捉える.

利尿薬や血液浄化療法を行うと,うっ血が解除され,腎機能が改善する.

心臓手術に伴うAKI

心臓手術は外科手術の中でもAKI 発症リスクが高いことが知られており,91 の心臓手術に関するメタ解析におけるAKI 発症率は,22.3%.

AKIは周術期の体液管理を困難にさせる合併症であり,AKI 発症後の院内死亡率は10.7%,長期観察(1~5 年間)の死亡率は30.0%とも報告されている.

加齢,既存の腎機能障害,人工心肺施行時間などがAKI のリスク因子として同定されている.

肝不全→AKI

肝硬変患者の30%がAKIを発症する.

古くからHRSという概念のもと,肝硬変に伴う血行動態,血流分布異常を中心とした機能的な異常がメインの病態と考えらえていた.
→最近では,急性尿細管壊死やbile cast nephropathy,全身性炎症が引き金になって非代償性肝不全へ急性伸展するACLF(acute on chronic liver failure)と呼ばれる病態では炎症細胞浸潤が腎組織に認められる.

病態

一過性の腎血流低下,臓器としての虚血状態がもたらす急性の腎障害.

数時間から数日という短期間で急激に腎機能が低下する.
→無尿や乏尿となり,その結果,体液過剰により透析が必要となる場合もある.

AKI to CKD

一過性の急性虚血,血流低下によるAKIは,腎機能が回復した後,CKDに移行しやすいことが疫学研究で知られてきた.

分子メカニズムとして,
1)尿細管間質に慢性的な炎症が持続する.
2)一過性の虚血障害によって受けた細胞内の変化が記憶され(hypoxic memory),ヒストン修飾やクロマチン立体構造などエピゲノムが変化する.
3)ミトコンドリアの機能不全
4)細胞のストレス応答不足
などが考えられている.

診断

RIFLE基準(Risk, Injury, Failure, Loss, End-stage kidney disease)

2004年に発表.

・血清クレアチニン値のベースラインからの1.5倍以上の上昇 もしくは,
・GFR >25%の低下 または,
・尿量<0.5mL/kg/時が6時間以上持続

一般に血清クレアチニン値の上昇は7日以内に判定する.
血清クレアチニン値のベースラインが不明な場合は,GFR75mL/min/L.73m2 を用いMDRD式から逆算する.
血清クレアチニン値が4mg/dL以上では,0.5mL/dL以上の急激な上昇で診断しFailureに分類する.

AKIN基準(Acute Kidney Injury Network)

2007年に発表.
RIFLE基準を一部修正.

・48時間以内に血清クレアチニン値の0.3mg/dL以上の上昇 もしくは,
・48時間以内に血清クレアチニン値が1.5倍以上の上昇 または,
・尿量<0.5mL/kg/時が6時間以上持続

48時間以内に2回以上血清クレアチニンを測定.
十分な補液が実施された上での診断と尿路閉塞の除外をする.

KDIGO基準

2012年に発表.
RIFLE基準とAKIN基準を統合した形.

AKI後の回復期において長期入院を余儀なくされた場合には,筋肉量低下によってベースラインと思われていた血清Cr濃度よりもさらに低い値を示し得ることなどが問題.

診断基準

1)~3)の一つを満たせば,AKI
1)48時間以内に血清クレアチニン値0.3mg/dL以上の上昇
2)7日以内に血清クレアチニン値がベースラインあるいは推定値から1.5倍以上に上昇
3)尿量<0.5mL/kg/時が6時間以上持続

重症度分類

重症度の高い方を採用する.

stage1
ΔsCr>0.3mg/dL
sCr 1.5~1.9倍上昇
尿量<0.5mL/kg/hrが6時間以上持続

stage2
sCr 2.0~2.9倍上昇
尿量<0.5mL/kg/hrが12時間以上持続

stage3
sCr 3.0~倍上昇
sCr≧4.0mg/dLまでの上昇
腎代替療法開始
尿量<0.3mL/kg/hrが24時間以上持続
12時間以上の無尿

検査

AKIにおいては,糸球体濾過量の低下から24~48時間遅れて血清Cr濃度が上昇することは古くから認識されており,早期にAKIを診断するには,血清Cr濃度の先行して変化する尿細管障害マーカーが有用.
→尿中NGALとL-FABPは複数のシステマティックレビューやメタ解析によって有用性が示唆されており,現時点では必ずしも真に有用と認められてはいないが,「AKI(急性腎障害)診療ガイドライン2016」ではその測定が提案されている.

シスタチンCは,血清での測定については早期診断のマーカーとしての有用性が示唆されているが,尿中シスタチンCについては明確には推奨されていないのが現状.

尿中NGALおよび尿中L-FABPは,保険適用も認められている.

尿中NGAL,(血中NGAL)

尿中NGALは約2時間後から上昇するとされており、AKIの早期診断に用いられている.

25-kDa,ポリペプチド
好中球・肝臓・腎臓(尿細管)にて産生される
細菌増殖阻害,鉄キレート作用,上皮細胞増殖誘導
糸球体で濾過され,近位尿細管でメガリンを介して取り込まれる.

尿中L-FABP

14-kDa 細胞質タンパク
糸球体で濾過され,近位尿細管から取り込まれる
細胞内で遊離脂肪酸をミトコンドリアなどに輸送する

(尿中IL-18)

18.3-kDa サイトカイン
免疫細胞と尿細管細胞にて産生される
caspase-1によりpro-IL-18から活性型IL-18が切り出される

(尿中KIM-1)

39-kDa 膜貫通タンパク
近位尿細管に発現
アポトーシス,ネクローシスに至った上皮細胞の除去の役割
尿細管障害による発現亢進
尿中に分泌される

(尿中[TIMP2]×[IGFBP7])

TIMP2→21-kDa
IGFBP7→29-kDa

細胞周期G1 arrestを来たす
上皮細胞に発現し,autocrineあるいはparacrineに作用して細胞周期停止を来たす

治療

腎前性(transient)AKIと腎性(persistent)AKIの2つのphenotypeを鑑別する必要がある.

→腎前性AKIでは輸液蘇生による腎灌流の改善により腎機能低下が急速に改善する一方,腎性AKIにおいては輸液に対する反応がなく,血清Cr濃度上昇と乏尿or無尿が数日~数週間にわたって遷延することが多い.

fluid challenge
ある程度の輸液負荷を行って,その後の尿量と血清Cr濃度の反応をみる.
*過剰な輸液負荷は肺水腫のリスクを高める可能性があり,心不全を合併している場合は人工呼吸管理も必要になるリスクあり.

AKIバイオマーカー
腎性AKIの病態は,急性尿細管障害(壊死)が多く,尿細管上皮細胞障害を検出することで鑑別が容易になる.
→AKIバイオマーカーは,尿細管の組織障害を担保するが,どのバイオマーカーを用いてどのようなカットオフ値を設定するかについての議論は十分ではない.

腎代替療法 renal replacement therapy;RRT

RRTが必要となる重症AKI(AKI-D)の予後は不良.院内死亡率は40~50%.

絶対的適応

・BUN>100mg/dL
・高K血症>6mEq/L+心電図異常
・高Mg血症>8mEq/L+乏尿や深部腱反射消失
・pH<7.15
・メトホルミン内服による乳酸アシドーシス
・利尿薬抵抗性の体液過剰

予防

低用量(1-3μg/kg/min)のドパミン投与
健常人において腎保護作用が期待されてきたが、近年のメタアナリシスで低用量ドパミンは生存期間を延長しないこと、透析導入率を低下させないこと、腎機能を改善させないことなどが明らかにされ、KDIGOのガイドラインではAKIの予防および治療目的では低用量ドパミンを使用しないことが推奨されている(1A)

栄養

AKIにおけるカロリー必要量
20~30kcal/kg/day

AKIにおける蛋白質必要量
保存期:0.8~1.0g/kg/day
透析期:1.0~1.5g/kg/day
CHDF中で高度な蛋白異化亢進状態にある場合:最大1.7g/kg/day

治療(敗血症性AKI)

初期蘇生終了後には,腎保護目的でのwet sideの管理は避ける.

糸球体はwetに,腎間質や静脈系はdryに管理する.

循環血液量不足による低灌流に対する蘇生輸液と,組織低灌流から離脱した後の輸液管理はきちんと区別する.
→過剰な輸液は,腎うっ血につながる.

昇圧薬が必要な場合,ノルアドレナリン or バゾプレシンの少量持続投与

eGFRの維持
・敗血症で低血圧を呈する場合,臓器灌流圧として平均血圧65mmHg以上を維持する.

ノルアドレナリンとバゾプレシンは,敗血症で拡張している輸出細動脈を収縮させることでGFRを増加させる.
*現時点では,低用量ドパミンは避けるべきと考えられている.

腎血行動態から,生理的にSBP<90mmHg未満になると糸球体内圧を維持できず,GFRが低下すると共に,尿細管への血流不足も生じて尿細管が低酸素に曝される.
→血圧の目標値を高めに設定した管理は,腎保護に有利に働く可能性がある.

近年,平均灌流圧(mean perfusion pressure)の概念が提唱されている.
=臓器血流は,平均動脈圧からCVPを引いた灌流圧に依存する.

h-ANPの少量持続投与(0.02μg/kg/min)

1)GFRの維持(輸入細動脈拡張,輸出細動脈収縮)
2)髄質への酸素供給(髄質血管拡張→血流上昇)
3)尿量を維持し,ボウマン嚢内圧の上昇を抑える.

GFRが低下する仮説として,腎内シャントがある.
→腎内シャントは,皮質で増加した腎血流が糸球体に流れるのを迂回させ,結果的に髄質に低酸素をもたらす.

GFRを確保し,尿流を保つことで,尿細管中の炎症性メディエーターや,PAMPs,DAMPsなどの濃度を低下させると共に,尿細管上皮障害の結果として脱落した顆粒円柱による遠位尿細管の目詰まりを防ぐ.

フロセミドの少量持続投与(1~4μg/kg/min)

1)尿細管のエネルギー消費を抑える.
2)尿量を維持し,ボウマン嚢内圧の上昇を抑える.
3)血管内脱水に注意

Henle上行脚の管腔側にあるNa+-K+-2Cl-共輸送体を阻害することで,血流増加や酸素需要を低下させ腎保護的に作用する.

*血管内脱水は避ける!
・RASが刺激され,腎の輸入細動脈が収縮し,GFRが低下する.
→フロセミドのボーラス投与は避ける.定期ボーラス投与も避ける.

早期からの血液濾過(kidney rest)

1)メディエーター対策
2)溶質除去サポート artifical renal support therapy
3)体液管理

体液過剰が発生した場合には,早期の利尿薬や限外濾過を用いて(de-resuscitation),機械的に体液除去して,正常な体液量に是正することで,長期的な死亡リスクを低下させることができると考えられている.

(アンジオテンシンⅡ)

強力な血圧上昇作用を有する生理活性物質であり,糸球体では輸入細動脈と比較して輸出細動脈をより強く収縮させる.

米国FDAは,敗血症性or血液分布異常性ショックに対する投与を承認している.

(組み換えヒトALP)

アルカリフォスファターゼ(ALP)は,エンドトキシンや細胞外ATPなどの炎症惹起物質を脱リン酸化することも知られている.

タイトルとURLをコピーしました