急性心不全

医学ノート(なすび用)

acute heart failure;AHF

なすび専用のまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
ちゃんとした正書や情報提供サイトを強く推奨します.
当ブログは一切の責任を負いません.

原因

直接原因

高血圧(かなり多い)

徐脈性不整脈,頻脈性不整脈(心房細動による心不全は多い)

AMI,虚血性心筋症

後天性・先天性の弁膜症

拡張型心筋症,肥大型心筋症の拡張相,閉塞性肥大型心筋症

心筋炎

薬剤性心筋障害

甲状腺機能亢進症,甲状腺機能低下症

高齢者の拡張障害(収縮が正常なら拡張不全,HFpEF)

肺血栓塞栓症(右心不全)

循環血液量の増加と低下,貧血

増悪因子

腎不全,高血圧,心筋虚血,甲状腺機能異常,肺疾患,敗血症を含む感染症,不整脈(頻拍),循環血液量減少(貧血),低栄養(低アルブミン血症 間質浮腫が起こりやすくなる),睡眠時呼吸障害(肥満),電解質異常(低Na血症),妊娠,β遮断薬,体液貯留を招く薬剤(NSAIDsや甘草),悪い生活習慣(大量の食塩・飲酒・ストレス)

病態

cardiac failure(心機能が顕著に低下)

例:特発性拡張型心筋症

vascular failure(心機能があまり低下していない)

例:高血圧性心不全

交感神経活動の亢進
→静脈と動脈両方の収縮
→前負荷と後負荷の増大
→心臓のキャパシティーを超えた血管内ボリュームの中枢への移動(central volume shift)

全身の血液量がとりたてて増えていないときの急性電撃性の肺水腫は,この機序で説明されている.

クリニカルシナリオ Clinical Scenario;CS

・急性心不全の超急性期の病態把握として用いられる概念.
・急性心不全を最初に測定された収縮期血圧を基本に病態分類したもの.

CS1

SBP(収縮期血圧)>140mmHg
・急激な発症
・肺うっ血>>全身浮腫(軽度全身浮腫)
・LVEF維持,CAD少ない
・血管不全
・治療反応性++

重症高血圧による肺水腫を生じた急性心不全では,ただちに治療を開始する.
NPPVと血管拡張薬を用いた治療が中心となる.
*利尿薬は後回し

1)硝酸薬(ニトログリセリンや硝酸イソソルビド)の舌下やスプレーおよび静脈投与が肺うっ血の軽減に有効.
2)カルペリチド(α型ヒト心房性Na利尿ポリペプチド)は血管拡張作用と利尿作用を併せ持つ.
3)ニコランジルやカルペリチドの持続静注も用いられる.
4)体液が多い場合には,フロセミドを併用する.
5)明確な降圧目標を定められていないが,症状の改善をみながら降圧を行う(通常10~15%程度の収縮期血圧の低下).

CS2

SBP100〜140mmHg
・緩徐な発症(体重増加)
・全身浮腫(静脈圧上昇)>>肺うっ血
・慢性的左室充満圧上昇
・多臓器障害(腎機能障害、肝機能障害)
・治療反応性±

NPPVと硝酸薬など
利尿薬も多分使う

CS3

SBP<100mmHg
・急激・緩徐な発症
・組織低灌流徴候
・軽度肺水腫,全身浮腫
・低心拍出症状または心原性ショック
・治療反応性不良

循環血液量減少なら輸液.
強心薬で改善しなければ,Swan-Ganzカテーテル
血管収縮薬も考慮

CS4

・急性冠症候群

まずは心筋酸素需要量の減少,冠血流量の増加を図る目的でニトログリセリンを持続静注する.

1)下壁梗塞で右室梗塞が疑われる場合にはニトログリセリンにより前負荷が低下するため,投与を避ける.
2)著明な徐脈など禁忌がなければ,β遮断薬を併用する.

CS5

・右心不全
・急激 or 緩徐
・肺うっ血なし
・全身浮腫++

Forrester分類

急性心筋梗塞における急性心不全の予後を予測する目的で作成された分類.

心係数(L/min/㎡)と肺動脈楔入圧(PCWP)(mmHg)」で血行動態的に4タイプに分類している.
心係数→末梢循環不全の有無
肺動脈楔入圧→肺うっ血の有無

肺動脈楔入圧(pulmonary artery wedge pressure;PAWP)
・バルーンカテーテルを右心房から肺動脈へ挿入し,バルーンを膨らませて肺動脈を塞いだときにカテーテルの先端にかかる圧.
・左房圧と左室拡張末期圧,間接的に左室収縮末期容積(LVEDV)を反映する.

心拍出量と肺動脈楔入圧は逆相関している.
「心拍出量が十分なら肺うっ血は起きない」「心拍出量不足なら肺うっ血が起こる」が基本.

なすび院長
なすび院長

肺動脈楔入圧でみるのは「肺うっ血」

病型の進行に伴い死亡率が増加することが示されている.

侵襲度が高い.

サブセットⅠ(心係数>2.2,肺動脈楔入圧<18)

肺うっ血なし,末梢循環不全なし→死亡率3%

急性期の治療は不要

サブセットⅡ(心係数>2.2,肺動脈楔入圧≧18)

肺うっ血→死亡率9%

利尿薬+血管拡張薬

サブセットⅢ(心係数≦2.2,肺動脈楔入圧<18)

末梢循環不全(欠乏性ショックを含む)→死亡率23%

輸液+強心薬

サブセットⅣ(心係数≦2.2,肺動脈楔入圧≧18)

肺うっ血(心原性ショックを含む)+末梢循環不全→死亡率51%

Ⅱ+Ⅲの治療

Nohria-Stevenson分類

・身体所見からより簡便に病態を評価できる.
・末梢循環および肺聴診所見に基づいた心不全患者のリスクプロファイルとして優れている.
・短期間での死亡例(心臓移植を含む)はProfile CとBに多かった.

なすび院長
なすび院長

「うっ血」は,「肺うっ血」と「全身性うっ血」の両方

Profile A:dry-warm

うっ血や低灌流の所見なし

Profile B:wet-warm

うっ血所見はあるが,低灌流所見なし

vascular failure→1)血管拡張薬 2)利尿薬
cardiac failure→1)利尿薬 2)血管拡張薬

Profile C:wet-cold

うっ血および低灌流所見を認める

①血管拡張薬・利尿薬優先 ②強心薬(カテコラミン)
*SBP<90mmHgなら強心薬優先

Profile L:dry-cold

低灌流所見を認めるが,うっ血所見はない.

輸液

評価

血管内ボリューム

ボリューム過剰

①右室サイズが大きい
②下大静脈径>15mm,呼吸性変動の消失
③中心静脈圧が高い(正常5~12cmH2O),右房圧>8mmHg(正常は2~8)

ボリューム不足

①右室腔は大きくない
②下大静脈径<10mm
③中心静脈圧が低い(<5cmH2O,右房圧<4mmHg)

病歴でも食事や水分摂取できていたか確認する.

胸部X線写真

軽度の肺うっ血(PCWP 18~20mmHg)
・上肺野の血管陰影が増強(再分布 redistribution)
・血管圧の上昇に応じた血管攣縮が関与.

間質性肺浮腫(PCWP 20~25mmHg)
・間質のうっ血が目立つようになると,Kerley B line(septal line)が出現(小葉間の浮腫を意味する線状影).
・気管支壁の肥厚(bronchial cuffing),葉間胸膜の水貯留(hair line)

肺胞性浮腫と肺水腫(PCWP 25mmHg)
・肺胞性浮腫(alveolar pulmonary edema)を生じ,両肺肺門部を中心に斑状陰影が出現.
・30mmHgを超え,肺水腫になると,陰影が融合し,butterfly shadowが出てくる.
・胸水は心不全の初期でも肺水腫の時期でも認める.

治療

α型ヒト心房性ナトリウム利尿ポリペプチド

カルペリチド ハンプ®

適応

急性心不全症状を呈した患者で,血圧が維持されており,容量負荷が多い症例
①収縮期血圧>100mmHg
②下大静脈径>15mm or 呼吸性変動が少ない CVP>12cmH2O
③LVEF>35%
*上記を満たさない状態や高齢者では少量(0.0125μg/kg分)で開始
*LVEF<30%,収縮期血圧<100mmHgは強心薬との併用が必要

禁忌

①重篤な低血圧 or 心原性ショックのある患者(降圧作用により低血圧が増悪)
②右室梗塞(静脈灌流が減少し,低心拍出状態を増悪させる)
③脱水症状(利尿作用によりさらに循環血漿量がさらに減少する)

使用方法

①シリンジポンプを利用し,単体で注射.
単体のみで詰まる恐れのある時は5%ブドウ糖500mLでルートキープ.
②ハンプ1Vを注射用水5mLで溶解後,5%ブドウ糖液45mL(20mL 2.25A)で希釈し総量50mLにする.
③0.025γ(μg/kg/min)から開始し,血圧 100~140 mmHg キープしながら調節する.
*最大 0.1γまで増量可.
*高齢者や心機能低下例は 0.0125γから開始.
④投与1時間後に症状・血圧・尿量などで効果判定する.以後は3~6時間ごとに判定.

医学ノート(なすび用)
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なすび院長

勤務医に疲れ,定期非常勤と投資でなんとかしのごうというひっそり医.
好きな分野は,糖尿病・腎臓病です!(゚∀゚)

ネット上で念願のなすびクリニックを作るも,今日も改装中で,いつ再開するのやら・・・
勉強好きで,私用に細々とまとめています.

妻:りんご
長女:いちご
次女:れもん
三女:みかん
事務長:かえる

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