急性冠症候群 acute coronary syndrome;ACS

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救急マニュアル

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

冠動脈疾患がプラーク破裂などの原因で急性に心筋虚血を来たし,突然心臓を灌流する血液量が減少する状態.

急性期治療が適切に行われないと急性期死亡率が高く,生存しても慢性期には心不全の原因となり,慢性期死亡率も高い.
→迅速な診断,緊急治療を要する.

病型分類

ST上昇型心筋梗塞 ST-elevation myocardial infarction;STEMI

非ST上昇型心筋梗塞 non-ST-elevation myocardial infarction;NSTEMI

不安定狭心症 unstable angina;UA

急性期診断

胸痛患者が来院してから10分以内に診断図をとる.

持続的ST上昇あり

STEMIの診断
→トロポニンなどの心筋バイオマーカーの結果を待たずに直ちに再灌流療法

トロポニンの採血結果が出るまでにかなりの時間がかかってしまうため,採血の結果を待つことなく,心臓カテーテル室に入室し,カテーテルを開始する.

なすび院長
なすび院長

心電図のST上昇をみた場合,直ちに心臓カテーテル治療を開始する!

持続的ST上昇なし

非ST上昇型急性冠症候群
→心筋バイオマーカーを測定し,鑑別(NSTEMI or UA)

NSTEMI→24時間以内の血行再建を考慮
UA→ハイリスク群では冠動脈造影

治療

再灌流療法

冠動脈の狭窄・閉塞が原因であり,その治療は血行再建術による冠動脈血流の改善が根治術になる.

STEMIでは,心筋壊死が進行しており,緊急の再灌流が必要となる.
→患者が病院のドアを通過してからPCIで冠動脈を再開通するまで90分以内が推奨.

primary PCIが劇的に死亡率を減らす.

PCI:percutaneous coronary intervention

PCIが第一選択

橈骨動脈アプローチ法
・大腿動脈アプローチ法より死亡率が低く,第一選択
・出血リスクが低いため,心筋梗塞関連の出血合併症のリスクが減る.

ガイディングカテーテル
IKARIカテーテルがSTEMIの時間短縮に有用

血栓溶解療法

組織型プラスミノーゲン活性化因子(tissue plasminogen activator;tPA)による血栓溶解療法はPCIができないときの第二選択
*NSTEMIやUAに対する適応はない

・再開通率は3~6割程度であること,禁忌症例が多いことなどが問題.
・tPAを使うことなくPCIを行うprimary PCIのほうが明らかに死亡率が低い.
→医療者の接触から2時間以内にPCIを行う見込みがないときに行う.

CABG:coronary artery bypass grafting

第三選択

優れた血行再建法であるが,STEMIでは病院到着から再灌流まで90分以内が推奨されており,病院到着から90分以内の再灌流を達成するのが不十分.
→PCIが不成功or施行困難な場合に緊急CABGを検討する.

内科的治療(急性期)

塩酸モルヒネ

唯一の鎮痛薬.
・ペンタゾシンはACSに対しては血管抵抗を増加させるため,慎重投与
・NSAIDsなどでは鎮痛は困難

モルヒネは,肺血管抵抗を下げ,肺水腫を改善し,血管抵抗も上げないため心破裂などの心配も少なく,死の不安を取り除くなど,最も適切な鎮痛薬になる.
→全例にルーチン投与する必要はないが,鎮痛が必要な場合は躊躇する必要はない.

酸素吸入

動脈血液中の酸素が低下していない場合は,特に治療成績に差はない.
→ルーチンに投与する必要はなく,動脈血液中の酸素が投与している場合に使用

ニトログリセリン舌下投与

血栓に対する効果はないが,冠攣縮には有効.
→ACSの原因は初診時には特定できないため,禁忌がなければニトログリセリン舌下投与

禁忌→ショック,PDE5阻害薬(バイアグラ®など)との併用

抗血小板薬

ACSに対しては,アスピリン+P2Y12阻害薬の2種類の抗血小板薬投与が有効

急性期にはローディング量を投与する.

STEMIの場合は,primary PCIを実施し,迷わずアスピリン+P2Y12阻害薬を投与する.

NSTEMIでCABG手術の可能性がある場合には,P2Y12阻害薬は効果が切れにくく手術時の止血困難を招くため,まずアスピリンを投与し,血管造影を行ってCABGを選択しないことを確認してから,P2Y12阻害薬を投与する方法もある.

機械的サポート

心不全やショックを合併する場合,心不全治療が適応されるが,不十分な場合は,機械的サポートが必要となる.

大動脈内バルーンパンピング法 intra-aortic balloon pumping;IABP

拡張期の血圧を増加させ,拡張期に流れる冠動脈の灌流を改善させる.

血圧サポートとして有効であるが,心拍出量のサポートは少ない.

経皮的心肺補助装置 percutaneous cardiopulmonary support;PCPS

右心房から脱血し,人工肺を通し酸素化した血液を動脈に還す.

心拍出量および酸素化のサポートは有効であるが,血圧のサポートは少ない.

IMPELLA®

左室のカテーテルからポンプで脱血し,大動脈へ出す.

心拍出量のサポートであると同時に,左室の負荷を減らすことから,心筋壊死の進展予防が期待されている.

酸素化のサポートはない.

急性期合併症

機械的合併症

急激な心筋の壊死から心筋が断裂することで合併する致死率が高い合併症.

発症24時間以内と,3~7日の間に発症のピークがあるが,発症後30日目までは合併のリスクがある.
・primary PCIが広く施行されるようになり,3~7日のピークは減った.

心破裂

心臓の自由壁が破裂することで,心膜腔へ出血し,突如心タンポナーデを来たす.

通常の心破裂は即死であるが,偶然にも破裂した部位がバルブ状になっており出血が微量であれば,救命の時間がある.

治療としては,緊急手術以外に救命の方法がない.

小さな領域の心筋梗塞でも合併することがある.

心室中隔穿孔

中隔梗塞に伴う心室中隔の断裂
・左前下行枝(LAD)の梗塞に合併する.

突然起こる左右シャントの結果,収縮期雑音を聴取し,血行動態が突然悪化し,心不全を合併する.

急激に進行する治療抵抗性の心不全であり,手術による閉鎖をしないと死亡率が高い.

乳頭筋断裂

乳頭筋が断裂することで起こる僧帽弁閉鎖不全.

突然の逆流で,血行動態が突然悪化し,心不全を合併する.
→急激に進行する治療抵抗性の心不全であり,手術が必要.

前乳頭筋はLADと左回旋枝の二重支配,後乳頭筋は右冠動脈の支配であることが多く,RCAの梗塞に伴う後乳頭筋断裂を見かける頻度が多い.

心原性ショック

心筋梗塞に伴う心原性ショック(SBP≦90)は極めて死亡率が高く,9割以上死亡する.

ドーパミン,ドブタミン,ノルアドレナリンなどのカテコラミンの点滴静注,機械的補助を行うが,救命にはprimary PCIによる再灌流治療が必須.
・primary PCIが成功しても,約4割は死亡する.

右室梗塞

右冠動脈が原因の心筋梗塞は下壁梗塞となり,右室枝も梗塞範囲となると右室梗塞を合併する.
・臨床的に問題になるのは下壁梗塞の約10%程度

右室からの低拍出となることで,低血圧・ショックを合併するが,通常の重症心筋梗塞に合併する肺水腫が逆説的に認められない.

診断は心電図のV4R誘導(右側胸部誘導)のST上昇,心エコーでの右室の壁運動低下・右房圧の上昇などから行う.

治療としては,左室前負荷を増やすために,大量に輸液を行い,肺動脈楔入圧を15mmHg以上に上昇させることを目標とする.

心室性不整脈

心筋梗塞急性期には,VF・VTをしばしば合併する.
・発症早期に多く,心筋梗塞の院外死亡の原因.

緊急で電気的除細動を行う(市中の場合には,AED).

薬物治療として,アミオダロンやニフェカラントを使用する.

発症後48時間以降には頻度は低下するが,VTやVFを来たす場合には,着衣型自動除細動器を使用する.

植込み型除細動器は,心筋梗塞発症後40日以内の植込みには有用性が認めておらず,40日以後に検討する.
・LVEFが低下した心不全例が対象

徐脈性不整脈

完全房室ブロックを合併する場合には,体外式ペースメーカを挿入する.

アトロピンは有効.

再灌流治療により,機能が回復することが多く,恒久的ペースメーカが必要になることは稀.

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