急性下肢動脈閉塞症 acute arterial occlusive disease

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なすび医学ノート

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急性動脈閉塞は,迅速な診断と適切な治療を行わなければ,肢のみならず生命予後も不良となる疾患.

いまだ10~28%の死亡率が報告され,患者の高齢化や,併存する心疾患,腎機能障害,脳虚血性疾患など,さまざまなリスクファクターが合併症を引き起こしやすいことが原因になっていると推察される.

死亡原因の1/3は塞栓血栓症に合併する筋腎代謝症候群(myonephropathic metabolic syndrome;MNMS)によるとの警告もあり,現在までその病態解明のためのさまざまな実験的・臨床的研究成果が報告されている.

原因

外傷性,医原性を除外すると塞栓症と血栓症に分類され,頻度は塞栓症70~80%,血栓症20~30%で,塞栓症の頻度が高い.

塞栓症はしばしば再発するため,再発予防には塞栓源の同定と除去が重要.

塞栓症 embolism

塞栓子が末梢動脈を突然閉塞し,組織虚血に陥る.

塞栓源により心原性塞栓症と非心原性塞栓症に分類される.

塞栓閉塞は末梢血管の分岐部に起こりやすく,どの末梢動脈でも起こりうる.
・発症部位は,上肢16.0%,大動脈9.1%,腸骨動脈領域16.6%,大腿動脈34%,浅大腿動脈4.5%,膝窩動脈14.2%,3分岐以下5.6%で,救肢率は68%と報告されている.

大きな塞栓子は腹部大動脈の分岐部で閉塞を起こし,いわゆる鞍上塞栓(saddle emboli)と呼ばれ,両下肢の急性動脈閉塞の原因となる.

塞栓症は側副血行路の発達がないため,臨床症状は劇的で,経過とともに末梢にplum-colored clotと呼ばれる二次血栓を生じる.

心原性塞栓症

心房細動
・左房左心耳に血栓が生じやすい.
・心房細動性は最も頻度が高い塞栓原因で,しばしば弁膜症に合併する.

弁膜症
・弁膜症性の基礎疾患ではリウマチ性僧帽弁膜症は減少している.
・機械弁による人工弁置換術後には弁に血栓が付着しやすく,術後の塞栓症が問題となる

心筋梗塞に伴う血栓
・心筋梗塞に起因する左室瘤や左室壁在血栓による塞栓症は増加しており,平均年齢も70歳と高齢化の傾向にある.
・塞栓症は心筋梗塞発症後平均14 日で起こる.
・本邦でも増加し,低心機能を伴う患者では生命予後は不良.

奇異性塞栓
・深部静脈血栓症が塞栓原因で,静脈系の血栓が開存卵円孔および心房中隔二次孔欠損を通過して左心系に到達することによって,動脈塞栓症を併発する.

その他
細菌性心内膜炎,心臓腫瘍,左房粘液腫,血管肉腫など.

非心原性塞栓症

アテローム塞栓症
・大血管の広範囲な不整粥状硬化病変(shaggy aorta)や潰瘍性病変(penetrating atherosclerotic ulcer; PAU),大動脈瘤壁からの粥腫,血小板血栓(platelet-rich thrombus)塞栓.
・急性動脈閉塞の10%に血栓を伴った膝窩動脈瘤が存在するといわれる.
・足趾に突然強い仏痛とともに色調変化をきたす微細塞栓症(blue toe syndrome)の原因にもなる.

血栓症 Thrombosis

Acute on chronic arterial thrombus
・ASO などの慢性閉塞性病変が,脱水,心拍出量低下,プラークの破綻などによって急性閉塞に陥る.
・慢性虚血による側副血行路の発達のため,塞栓症の劇的な発症様式とは異なり,比較的緩徐な経過を呈する.
・既往に間歇性跛行が存在することが多い.

血管炎
・Buerger 病,Behçet 病,高安動脈炎など.
・障害された動脈に血栓性閉塞をきたす.

大動脈解離
・偽腔による真腔の圧排狭窄が原因で,内臓動脈の血流低下や下肢虚血が生じる.

その他
バイパス血管閉塞,外傷,過凝固状態,担癌状態,ヘパリン起因性血小板減少症(heparin induced thrombocytopenia; HIT)などがあげられる

症候

身体所見

急性に発症し進行する患肢の疼痛(pain),知覚鈍麻(paresthesia),蒼白(pallor/paleness),脈拍消失(pulselessness),運動麻痺(paralysis/paresis)の “5P” が特徴.
・虚脱(prostration)を加えて “6P” とする場合もある.

筋肉硬直,水疱形成,壊疽の状態を把握する.

大腿・膝窩動脈の拍動や腫瘤の触診(動脈瘤の有無の確認),ドプラ法による足背・後脛骨動脈の聴診を行う.

初期の病変から二次性血栓が進展すると症状はさらに悪化する.

虚血に対する耐性は組織によって異なり,一般に発症から4~6時間で神経,筋,皮膚の順で非可逆的変化に陥り,24 時間後には 20% が肢切断に至る.

知覚神経障害や,腓骨神経麻痺に起因する drop foot を認める場合は,緊急性が高い.

検査

心電図,胸部単純 X 線写真,血算,生化学,凝固系,尿検査に加え,血中・尿中ミオグロビン,CK,LDH,患側大腿静脈血カリウム値の測定,血液ガス分析を行う.
・全身血カリウム値に対する患肢血カリウム値の高値(1.5 mEq/L 以上),血中・尿中ミオグロビン/CK/LDH の異常高値,代謝性アシドーシス,血尿(ミオグロビン尿)が認められた場合は,広範な平滑筋の崩壊と MNMS の可能性を考える

比較的緩徐な経過で末梢動脈のドプラ音が聴取可能な場合は,あらかじめMDCT や血管造影で責任病変の同定と術式の検討を行う.

重症度

治療

初期対応

診断が確定し次第,患者の全身状態や年齢を考慮し,まず,可及的速やかに未分画ヘパリン3,000~5,000単位の静注を行い,二次血栓の進展を予防する.
・血栓溶解薬の全身投与は推奨されていない.

次に,組織が非可逆的変化に陥るまでのゴールデンタイムは6時間であるため,迅速に塞栓症か血栓症かの鑑別診断と重症度判定を行い,塞栓血栓除去を行う.

まずは,ヘパリン 3000~5000単位静注→ヘパリン持続静注(ヘパリン 10000単位+生食14mL→2mL/hr)

カテーテル・手術

バルーンカテーテルによる塞栓血栓除去を行う.

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