先端巨大症 acromegaly

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なすび医学ノート

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

成長ホルモン(growth hormone;GH)の過剰により,特有の顔貌や体型および代謝異常をきたす疾患.

骨端線が閉鎖する以前に発症すると,身長の著明な増加をきたし,下垂体性巨人症(gigantism)と診断される.
骨端線が閉鎖した後では,先端巨大症となる.

適切な治療が行われない場合,一般人に比べ心血管系や呼吸器合併症のため約10年平均寿命が短いことが示されている.

関節痛,手根管症候群,睡眠時無呼吸症候群,頑固な頭痛などは患者のQOLを著しく損なう.

糖尿病についても罹病期間が長いと,不可逆性の糖尿病になる.

早期発見と適切な治療の選択が非常に重要!

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疫学

有病率は50~70人/100万人,発症率は3~4人/100万人/年.男女ほぼ同数か,女性にやや多い.

40~50歳で診断されるケースが多く,男女差・人種差はない.

身体の変化はゆっくり進行するため,患者本人は加齢変化と思っていることも多く,発症してから診断に至るまで10年前後と長い例が多い.

糖尿病では,1000~2000例に1例の割合で先端巨大症が隠れている計算となり,糖代謝異常もしくは糖尿病患者でIGF-1値からスクリーニングするのが効率的.

日本における先端巨大症患者の死亡原因は,悪性腫瘍(23%,一般人口の約1.5倍),脳血管障害(18%),心疾患(15%),呼吸器疾患(10%),その他(34%).死亡時平均年齢は59歳.

原因

GH産生下垂体腺腫

・99%以上を占める.そのうち,10~40%にGNAS(Gsα)の体細胞変異を認める.
・Gsαがモザイク変異のMcCune-Albright症候群に伴う場合がある.

遺伝性GH産生下垂体腺腫

まれに家族性のものとして,多発性内分泌腫瘍Ⅰ型(MENⅠ変異),Carney complex(PRKARIA変異),家族性先端巨大症や家族性下垂体腺腫(一部にAIP変異)がある.

稀な原因

・GHRH産生腫瘍(視床下部ガングリオサイトーマ)

・異所性GHRH産生腫瘍(気管支/消化管/膵内分泌腫瘍,副腎腺腫,褐色細胞腫,甲状腺髄様癌,肺小細胞癌)

・異所性GH産生腫瘍(膵内分泌腫瘍,悪性リンパ腫)

高プロラクチン血症を伴う場合

下垂体茎の圧迫によるものと下垂体腺腫細胞からGHとともにプロラクチン(PRL)が同時産生される場合(mammosomatotroph adenoma,mixed GH and PRL cell adenoma,acidophilic stem cell adenoma)がある.
・電顕ではdensely granulatedとsparsely granulated somatotroph adenomaに大別され,後者はfibrous bodyが光顕レベルでサイトケラチン染色によりドット状に染色される.

病態

GHの作用のほとんどはインスリン様成長因子(IGF-Ⅰ,ソマトメジンC)を介して発現される.

それ以外に,脂肪細胞,軟骨細胞や筋肉細胞などの分化・誘導というGH特異的な直接作用もある.

IGF-Ⅰは肝臓,軟骨細胞,筋肉,腎臓など生体内の多くの組織で産生され,その局所で増殖因子として作用する.

関節痛・関節炎

・約半数に生じる,初発症状となることもある.
 関節軟骨の不均等な増殖の結果,関節が不安定になり,機械刺激がさらに加わり,骨棘や変形をきたす(hypertrophic arthropathy).

手根管症候群 carpal tunnnel syndrome

手のしびれ,坐骨神経痛,末梢性の感覚運動神経障害

心疾患

高血圧・心肥大・心筋症・心不全

・中期では両室肥大心となり,拡張不全の結果,心拍出量の低下や相対的冠血流の低下が生じる.
 間質組織の浮腫・細胞浸潤・線維化も生ずる.
 一方,伝導障害も合併し,心室性の期外収縮などの不整脈もしばしばみられる(40%).
 さらに左心室肥大に伴って,大動脈弁閉鎖不全(30%)と僧帽弁閉鎖不全(5%)を生ずる.
 末期では拡張性の心不全をきたす.
 初期であれば,GH過剰を正常化すると,初期であればその進行を阻止したり,ある程度回復することが可能.

内分泌代謝障害

糖尿病,脂質異常,性欲低下,不妊・無月経,乳汁分泌や女性化乳房

・GHがインスリン作用と拮抗するため,耐糖能低下(35~50%)や糖尿病(40~56%)を引き起こす.
 筋肉でのインスリン受容体後の過程で,インスリン作用を阻害する.GHはGLUT1の発現を抑制し,骨格筋や肝での糖利用を低下させる.
 また,脂肪分解作用を有し,遊離脂肪酸の血中濃度を高め,glucose-fatty acid cycleを介して糖の代謝を抑制する.

・GHの脂肪分解促進と中性脂肪分解抑制により,血中の遊離脂肪酸と中性脂肪が増加する.

・GH産生腺腫からのプロラクチン同時産生あるいは下垂体茎や視床下部の圧迫に伴う二次的な高プロラクチン血症をきたす.

・増大した腫瘍が正常のLH/FSH細胞を直接に圧迫する.
→高頻度で月経異常や性腺機能低下症をきたす.
→腫瘍がさらに増大すると,TSHやACTH分泌低下を生じる.

多結節性甲状腺腫

・ほとんどで甲状腺機能は正常.甲状腺機能亢進症を呈する場合はTSH産生腺腫の合併や機能性甲状腺腫の合併を考える.

腫瘍圧迫症状

頭痛,視野障害

・GH産生腺腫の75%が腫瘍径1.0cm以上のマクロアデノーマ(macroadenoma)であることや,本頭痛が腫瘍径1.0cm未満の微小腺腫(microadenoma)でも生じることから,腫瘍の硬膜浸潤や鞍隔膜の進展によるものと考えられている.
・腫瘍が鞍上部に及ぶにつれ,頭痛は増強し,視野障害・欠損は上外側1/4盲から,両耳側半盲へと拡大する.
 さらに上方進展し,鞍隔膜を破ると,頭痛はむしろ軽減するが,視野・視力障害はさらに悪化する.

大腸ポリープ

大腸癌のリスクが高い

睡眠時無呼吸症候群

上気道の構成成分である,舌,下顎骨の肥厚・変形,咽頭や喉頭部粘膜の浮腫による閉塞性.中枢性のSASが併存し,病初期より高頻度に合併する(50~70%).

不安神経症的な性格

病理

・GHの分泌顆粒に富む好酸性のdensly granulated GH cell adenoma(DGA)と,分泌顆粒が少なくサイトケラチン染色にてfibrous bodyが観察される嫌色素性のsparsely granulated GH cell adenoma(SGA)に大別される.

・GDAは成長速度が遅い腫瘍で,50歳以上に多い.

・SGAはDGAに比べて頻度は低いが,若年性(特に女性)に多く,一般に腫瘍増殖が速い.

・SGAはTRH負荷に対する奇異性反応の頻度は低い,オクトレオチド(サンドスタチン®)に抵抗性を示す例が多いなどの特徴も認められる.

症候

GH過剰による全身症状と下垂体腺腫としての局所症状に分けられる.

診断にあたっては,発汗過多,軽い顔貌の変化や先端部の肥大などに注目する.
顔貌変化の自覚はあまりなく,以前の写真と見比べる必要があり,発病初期や非典型例では顕著でないことがある.
・握手したときに手が大きくて,汗ばんでいる.
・靴や指輪のサイズの変化を尋ねる.

難治性高血圧やインスリン抵抗性の糖尿病が発見契機となることもある.

身体的特徴

身体の変化を自覚していないこともある

顔貌変化(97%)→眉弓部の膨隆,下顎前突,大きな鼻,口唇肥厚

巨大舌(75%),声帯の肥大,副鼻腔の拡大→低い声(こもった声・ふくみ声) deepening of the voice

手足の容積増大(97%),高身長

胸郭の樽状変形→相対的な気管・気管支の狭小化

発汗増多(70%),厚い皮膚,皮膚浸潤,Oily skin,疣贅の増大

月経異常(43%)

一般検査

血清P濃度上昇←腎尿細管におけるリン排泄を抑制する.

尿糖陽性(33%),空腹時血糖高値(39%),ブドウ糖負荷試験で境界型または糖尿病型の耐糖能異常(74%)を認める.

診断

内分泌検査

成長ホルモン GH

・GH基礎値は上昇するが,脈動的分泌のため,健常人でも空腹・睡眠・運動・ストレス等の刺激により最大20~30μg/L以上まで上昇しうる.
・健常成人の早朝空腹時血中GH値(基礎値)は概ね1.0ng/mL以下.一方,先端巨大症ではGH基礎値は大多数が2.5ng/mL以上を示し,腫瘍からの自律性GH分泌のため,日差変動や日内変動が小さくなる.

インスリン様成長因子-1 insulin-like growth factor;IGF-1

旧称ソマトメジンC

・IGF-1は健常者の年齢,性別基準範囲に照らして判定する.GHと異なり,日内変動がなく,GHの総分泌量を反映するため,ワンポイント採血での診断特異性はGH測定より高い.
・IGF-1は肝臓由来であるため,肝疾患では低下する.他に低栄養,腎疾患,甲状腺機能低下症,コントロール不良の糖尿病などが合併すると高値を示さないことがある.

その他のホルモン基礎値

・中枢性の甲状腺機能低下症や性腺機能低下症を合併することが多い.
→FT4,FT3,TSH,ACTH,コルチゾール,LH,FSH,遊離テストステロン(男性),エストラジオール(E2:女性)測定

・PRLの同時産生腫瘍が約1/4に認められる.
→PRL測定

負荷試験

75gOGTT

・健常者ではGHは1ng/L未満に抑制されるが,活動性先端巨大症ではほぼ全例で抑制されない(1.0μg/L以上).
・感度が高い検査のため,疑わしい場合には必須である.
*空腹時血糖が200mg/dLを超えるような糖尿病患者では行わない.
*糖尿病,肝疾患,腎疾患,若年者では糖負荷でGHが正常域まで抑制されないことがあることに注意する.

奇異反応
GHが抑制されず,むしろ上昇を示す反応.
・糖代謝を悪化させる
・オクトレオチド,ブロモクリプチンへの薬物反応性が良好

TRH試験,LH-RH試験,CRH試験(3者同時負荷試験でも可)

・それぞれGHの奇異性上昇がみられる(約70%,約20%,数%).
*前値の2倍以上に増加した場合を奇異反応とする.
*神経性食欲不振症,うつ病,慢性腎不全でも奇異反応を認める.

ブロモクリプチン負荷試験

・ドーパミン作動薬剤のブロモクリプチンは健常人ではGH分泌を刺激するが,本症の70~80%では抑制する.
・プロラクチノーマ合併例ではGHとPRLを測定する.
・負荷後4~8時間後で最低値をとる.
*副作用:悪心・嘔吐などの消化器症状と起立性低血圧.転倒予防に内服後6時間は車椅子で移動する.

オクトレオチド(サンドスタチン®)負荷試験

・ソマトスタチンは血中GHを低下させるが,血中半減期が2~3分と短い.オクトレオチドはソマトスタチンの活性配列を持つ誘導体で,半減期が100~105分と長く,先端巨大症の治療薬として開発された.
 酢酸オクトレオチド(サンドスタチン®) 100μgを単回に皮下注射すると先端巨大症の70~80%で血中GHの低下がみられ,負荷後4~6時間で最低値をとる.
・腫瘍縮小効果も期待.

画像診断

下垂体MRI

・1cm以上のマクロアデノーマが多く,造影MRIが有用.
・典型的にはトルコ鞍内から鞍上に進展し,正常下垂体を圧排する腫瘍を認める.腺腫では等信号からやや高信号(iso~slightly high signal nodule)を呈し,ガドリニウムで造影するとless enhanced noduleを示す.造影のT1強調画像で正常下垂体は強く造影されるのに対し,腺腫は弱く造影されるので区別できる.
・SGAでは視神経を圧迫するような大きな腫瘍や,海綿静脈洞浸潤を伴うことが少なくない.
・腺腫内出血による嚢胞形成,empty sela(トルコ鞍空洞)となる場合がある.
 →拡大したトルコ鞍に沿って,弧状に菲薄化した正常下垂体の下方に腫瘍が認められる.
・GH産生腺腫は下方へ進展することが多い.T2強調画像で低信号を呈しやすい.
・正常下垂体の腫大(過形成)が疑われるときは異所性GHRH産生腫瘍を疑い,責任病巣の検索を行う.

頭部X線写真(側面像)

・前後径17mm以上,深さ13mm以上は異常
・トルコ鞍の風船様拡大(ballooning)や破壊
・トルコ鞍の二重化(double floor)

手指X線写真

手指末節骨のカリフラワー様肥大変形

左右heel pad軟線撮影

正常値は22mm未満.

合併症スクリーニング

大腸内視鏡

ポリープや大腸癌の頻度が高い.40歳以上では原則として実施を勧める.

甲状腺超音波

高率に多結節性甲状腺腫を合併する.甲状腺癌の合併頻度が高いとの報告もある.

心臓超音波

心肥大,弁膜症,心筋症を合併する頻度が高い.

視力・視野検査

視力低下

視野異常の有自覚症状,またはMRIで視神経の圧排が疑われる場合検査.

先端巨大症の診断の手引き:2012年

確実例:Ⅰのいずれか,およびⅡをみたすもの
疑い例:Ⅰのいずれかを満たし,かつⅢのうち2項目以上を満たすもの

Ⅰ.主症候
1) 手足の容積の増大
2) 先端巨大症様顔貌(眉弓部の膨隆,鼻・口唇の肥大,下顎の突出など)
3) 巨大舌
*発病初期例や非典型例では症候が顕著でない場合がある.

Ⅱ.検査所見
1) 成長ホルモン(GH)分泌の過剰
 血中GH値がプドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない
*正常域とは血中GH底値1μg/L(リコンビナントGHを標準品とするGH測定法)未満である.糖尿病,肝疾患,腎疾患,青年では血中GH値が正常域まで抑制されないことがある.また,本症では血中GH値がTRHやLH-RH刺激で増加(奇異性上昇)することや,プロモクリプチンなどのドパミン作動薬で血中GH値が増加しないことがある.さらに腎機能が正常の場合に採取した尿中GH濃度が正常値に比べ高値である.
2) 血中IGF-1(ソマトメジンC)の高値
*健常者の年齢・性別基準値を参照する.栄養障害,肝疾患,腎疾患,甲状腺機能低下症,コントロール不良の糖尿病などが合併すると血中IGF-1が高値を示さないことがある.
3) MRIまたはCTで下垂体腺腫の所見を認める
*明らかな下垂体腺腫所見を認めない時や,ごく稀にGHRH産生腺腫の場合がある.

Ⅲ.副症候および参考所見
1) 発汗過多
2) 頭痛
3) 視野障害
4) 女性における月経異常
5) 睡眠時無呼吸症候群
6) 耐精能異常
7) 高血圧
8) 咬合不全
9) 頭蓋骨および手足の単純X線の異常
*頭蓋骨単純X線でトルコ鞍の拡大および破壊,副鼻腔の拡大,外後頭隆起の突出,下顎角の開大と下顎の突出など,手X線で手指末節骨の花キャベツ様肥大変形,足X線で足底部軟部組織厚heel padの増大=22mm以上を認める.

下垂体性巨大症の診断の手引き:2012年

確実例:Ⅰのいずれか,およびⅡをみたすもの.
疑い例:Ⅰを満たし,かつⅢのうち2項目以上を満たすもの.
*ただし,いずれの場合もⅣを満たす必要がある.

Ⅰ.主症候
1)著明な身長の増加:発育期にあっては身長の増加が著明で,最終身長は男子185cm以上,女子175cm以上であるか,そうなると予測されるもの.
*2年以上にわたって年間成長速度が標準値の2.0SD以上,なお両親の身長,時代による平均値も参考とする.
2)先端巨大:発育期には必ずしも顕著ではない.

Ⅱ.検査所見
1)成長ホルモン(GH)分泌の過剰:血中GH値がプドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない
*正常域とは血中GH底値1μg/L(リコンビナントGHを標準品とするGH測定法)未満である.糖尿病,肝疾患,腎疾患,青年では血中GH値が正常域まで抑制されないことがある.また,本症では血中GH値がTRHやLH-RH刺激で増加(奇異性上昇)することや,プロモクリプチンなどのドパミン作動薬で血中GH値が増加しないことがある.さらに腎機能が正常の場合に採取した尿中GH濃度が正常値に比べ高値である
2)血中IGF-1(ソマトメジンC)の高値
*健常者の年齢・性別基準値を参照する.栄養障害,肝疾患,腎疾患,甲状腺機能低下症,コントロール不良の糖尿病などが合併すると血中IGF-1が高値を示さないことがある.
3)MRIまたはCTで下垂体腺腫の所見を認める
*明らかな下垂体腺腫所見を認めない時や,ごく稀にGHRH産生腺腫の場合がある.

Ⅲ.副症候および参考所見
1)発汗過多
2)頭痛
3)視野障害
4)女性における月経異常
5)睡眠時無呼吸症候群
6)耐精能異常
7)高血圧
8)咬合不全
9)頭蓋骨および手足の単純X線の異常
*頭蓋骨単純X線でトルコ鞍の拡大および破壊,副鼻腔の拡大,外後頭隆起の突出,下顎角の開大と下顎の突出など,手X線で手指末節骨の花キャベツ様肥大変形,足X線で足底部軟部組織厚heel padの増大=22mm以上を認める.

Ⅳ.除外規定
脳性巨人症ほか他の原因による高身長例を除く.

治療

治療の目的は,GHの過剰分泌を是正して,軟部組織の肥大など可逆的な臨床症状を軽減し,合併症の進展を防ぐこと,下垂体腺腫に基づく症状を改善することにある.

①正常な下垂体機能を損なうことなく,腫瘍を除去もしくは退縮
②腫瘍による周辺正常組織への圧迫・障害,疾病の症候の是正・除去
③一般人口の死亡率までの低減

年齢,活動性,合併症の程度,腫瘍の大きさと位置,治療の持続性,費用対効果,副作用などを十分に考慮したうえで,個々の症例に応じた治療を選択することが重要である.

高齢者(70歳以上)
・慢性の頭痛,関節痛などQOLを低下させる症状があったり,高血圧や糖尿病の治療に難渋している場合は,高齢者であっても積極的に治療すべき.
・非高齢者と同様に手術療法を第一選択とするが,手術が難しい症例も多いと考えられるので,手術困難症例ではプライマリー治療として薬物療法の導入を積極的に考慮する.
・薬物療法ではGHおよびIGF-1値が正常範囲まで改善されることにこだわらず,症状の改善がみられる程度の用量を使用でもよいかも.患者の負担が治療のメリットを上回るようであれば,中止するのも選択肢.

手術療法

禁忌がない限り,手術療法が治療の原則.早期発見,早期診断により,腫瘍がトルコ鞍内にとどまっているうちに手術を行うことが望ましい.

経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術(transphenoidal adenomectomy:Hardyの手術)が第一選択で,熟練した脳神経外科専門医による内分泌的治癒率は70%程度である.
・上の歯の付け根の口腔粘膜に横に2cm程度切開し,鼻腔の裏側に相当する部分に入る.鼻の粘膜を左右に圧排し,特殊な鼻鏡を挿入する.手術用の顕微鏡をセットし,蝶形骨洞を開く.被膜外剥離,en bloc摘出.

手術の成功率は下垂体腺腫の大きさと海綿静脈洞浸潤の程度による.腺腫が小さいうちに早期診断し,治療することが最も重要.

腺腫と周囲前葉の境界部の構造は,肉眼的にも組織学的にも各症例により大きく異なる(単純被膜型,線維化浸潤型,前葉圧排型,前葉置換型).

組織学的に真の被膜はないが,仮性被膜(外科的被膜)を用いた被膜外切除は根治性の高い摘出(機能性腺腫では内分泌治癒)が期待できる.
・ただし,仮性被膜は全例,全周性に認めるわけではなく,仮性被膜にこだわりすぎると周囲前葉組織の損傷・犠牲が大きくなることに留意.

腫瘍が大きい場合は,術前にオクトレオチドを投与したうえで手術を行う場合もある.

術後検査

腫瘍が治癒切除かどうか,正常下垂体機能が温存されているかどうかがポイント.

75gOGTTは,基本的には術後1~4週間後に実施する.
・治癒基準を満たしていなければ,速やかに治療を開始する.
・治癒基準のGH値は日本では1.0ng/mL未満,海外では0.4ng/mLと異なるため,GH値が0.4~1.0ng/mLの症例では,他の合併症を考慮して治療方針を決める.

75gOGTTによるGHの抑制の有無,IGF-1の正常化の有無,3者負荷試験でのGH奇異性上昇が消失しているかどうかを確認する.

術後3~6ヶ月に測定したGH値,IGF-1値に乖離がある場合,GH値が軽度高値,IGF-1値が正常値であれば様子をみる.反対にIGF-1が高値であれば治療を開始する.

下垂体機能低下の有無も評価.

予後判定/補助療法選択の一助となる組織検査:
1)組織形の確認:denselyかsparselyか?他の特殊なタイプか?
2)増殖能の評価(Ki-67)
3)各receptor発現の評価
4)MGMT発現やAIP遺伝子異常の評価

*再手術の適応
・若年者では長期間GH過剰に曝される可能性が高いことから,摘出可能な残存腺腫があれば再手術も勧める.

薬物療法

手術禁忌例や手術療法の効果がなかった場合.

治療開始前に薬剤に対するGH抑制効果(持続時間や抑制度)をあらかじめ調べておくのがよい.

第一世代SSAの抵抗因子は,SSTR2低発現,SG type,AIPなどであり,多くは外科治癒困難例と重なる.選択には腫瘍組織型,受容体発現を考慮する.

残存腺腫に対する永続的効果は通常期待できない.

いずれの薬物治療でも長期投与に伴う副作用に注意する.

2009年10月から特定疾患治療研究事業の対象となり,患者の医療費負担はかなり軽減された.

ドーパミンアゴニスト

ブロモクリプチン,カベルゴリン

ソマトスタチンアナログ(SSA)

第一世代:オクトレオチド,ランレオチド

第二世代:パシレオチド

GH受容体拮抗剤

ペグビソマント

octreotide(サンドスタチンLAR®10mg,20mg,30mg:筋注)

まず20mgを4週毎に臀部に筋注する.臨床症状の改善度,副作用の有無,GH,IGF-1値を測定し,病態に応じて投与量を10~40mgで調整し,4週毎に投与する.
・20mgから30mgへの増量は比較的躊躇なく行うが,30mgから40mgへの増量は躊躇することが多い.

ソマトスタチンアナログ.視床下部から分泌されるペプチドホルモンで,脳下垂体からの成長ホルモンの分泌を抑制する.

有効率は70%以上で,腫瘍の縮小効果もある.

オクトレオチド負荷試験でGHがよく低下した症例では治療効果が期待できる.

副作用は開始時の下痢で,ラックビー®やロペミン®で対応.白色便もみられるが,文献では2ヶ月で治まるとの報告が多い.

胆石が発現しやすいため,半年~一年毎の腹部エコーが推奨されている.ウルソ®が有効(予防的に使用する人も).

インスリン分泌を抑制するため,糖尿病の悪化には注意が必要(食後高血糖).悪化を認めた場合は,ペグビソマント治療への変更を考慮.

一定量の薬物を長時間持続的に放出させるマイクロスフェア型注射剤.マイクロスフェア内部に専用分散液が侵入すると,内包されている薬物が拡散し,28日以上にわたって放出される.そのため,投与直前に懸濁する必要がある.

2014年6月30日よりサンドスタチン®LAR®筋注用キットを新発売.懸濁性の向上,維持のため,分散液を改良(逆さにしたり,震盪してもOK).

②lanreotide(ソマチュリン®:皮下注)
・ソマトスタチン-14の活性中心を残し,アミノ酸の置換や,D型異性体を用いることで長時間作動性を実現.
・高濃度溶液中ではナノチューブ構造によりゲル状であるものの,生体内ではデポを形成して徐放化が可能となった.
・初回投与量を90mgと定め,4週毎に3ヶ月投与,GH,IGF-1値を測定し,病態に応じて,投与量を60~120mgで調整し,4週毎に投与する.副作用などの場合は減量とする.
・60mgまたは90mgで良好で安定した状態を示す患者は,120mgに変更し,投与間隔を8週毎,6週毎に延長できる場合がある.
・Tmaxが投与後6時間,半減期が28日.ウォッシュアウト期間が比較的短く済む.
・投与間隔を長くできる可能性があることに加えて,1回の投与用量が少ないこと,さらにあらかじめ薬剤が注射器に充填された状態で包装・製品化されているため(プレフィルドシリンジ),投与前の調整操作が不要となり,患者および医療従事者の負担を軽減し,良好なアドヒアランスを期待できる.

③pasireotide(現在,欧米で治験中)
・GH産生腺腫の多くは,ソマトスタチン受容体サブタイプの2と5(SSTR2,SSTR5)を発現している.オクレオチドとランレオチドはSSTR2に親和性が強く,SSTR5に対しては弱い.一方,パシレオチドはSSTR1~3,5に幅広く親和性を持つため,その効果が期待されている.

④cabergoline(カサバール®:ドパミン作動薬)
・先端巨大症には保険適応がなく,プロラクチノーマまたは高PRL血症の合併例で適応となる.
・一般的には,術後の補助療法として1~3mg/週を,単独あるいはオクトレオチドと併用して用いられる.
・プロラクチノーマ合併例でより効果が高い傾向がある.

⑤pegvisomant(ソマバート®:GH受容体拮抗薬)
初日に40mgを皮下注射,以降10mg/日を継続,IGF-1値を1ヶ月毎に測定し,30mg/日を上限に5mgずつ適宜漸減する.自己注射を指導する(自宅の冷蔵庫に保管スペースが必要).
・オクトレオチドやカベルゴリン治療が奏功しない症例に対して,単剤あるいは併用して用いる.
・サンドスタチンLAR®の併用により,投与量や投与回数を減らすことが試みられている.
・IGF-1正常化率は一番高く,糖尿病を悪化させない.
・問題点は,高価であること,腫瘍の縮小効果はなく,GHはむしろ上昇して腫瘍が増大する可能性があること.
→GHは治療の指標にならない.使用開始後6ヶ月後,以降,年に1回はMRIを撮影する.

■放射線療法
・薬物療法で症状の改善が得られない場合.腫瘍サイズ増大の抑制ができる.
・局所腫瘍制御のため定位放射線照射(γナイフ,サイバーナイフ)が行われ,従来の外照射に比べ良好な治療成績が得られているが,放射線障害による下垂体機能低下症が問題となる.
・視神経から5mm以上離れていれば,照射可能.
・寛解基準が施設により異なるが,定位照射により45%,薬物治療と併用で60%が平均的な寛解率.

■その他
 尿崩症や下垂体前葉機能低下症を伴う場合には,それぞれに応じた薬剤による補充を行う糖尿病,高血圧症,脂質異常症,心疾患,変形性関節症,悪性腫瘍(特に大腸癌)のような合併症を伴うことが多いので対症的に治療する.
 心血管障害に関連して動脈硬化性血管病変や心疾患の検査を定期的に行い,高血圧,糖尿病,脂質異常症を良好にコントロールする.悪性腫瘍については標準的スクリーニングが行われるが,先端巨大症の診断時に,上部および下部消化管の精密検査を実施しておく.

■治療効果判定基準
①コントロール良好(治癒または寛解)
 ブドウ糖75g経口投与後,抑制された血中GH底値が1μg/L未満(注1)
 +IGF-1値が年齢性別基準範囲内である.
 +臨床的活動性を示す症候(注2)がまったく無い.
→治療継続/経過観察

②コントロール不十分
 ①および③のいすれにも該当しないもの
→治療方法の変更/追加を検討

③コントロール不良
 ブドウ糠75g経口投与後の血中GH底値が2.5μg/L以上(注1)
 +IGF-1値が年齢性別基準範囲を超える(注3).
 +臨床的活動性を示す症候がある.
→治療方法の変更/追加

注1:コントロール良好(治癒)およびコントロール不十分,不良のカットオフ値は便宜的に1μg/Lおよび2.5μg/L(リコンビナントGHを標準品とするGH測定法)に設定する.無作為に採血した血中GH基礎値が十分に低値の場合(1μg/L未満).ブドウ糖75g経口投与は必すしも必要で無く,血中GH基礎値を投与後の血中GH底値と読み替えることができる.薬物治療中の場合もブドウ糖経口按与は必すしも必要でない.GH受容体括抗薬で治療中の場合,血中GH値による判定はできないため,lGF-1値と臨床的活動性から判定する.
注2:頭痛(本症に起因すると思われる頭痛[発症時期,頑固さ,酢酸オクトレオチド著効などから判断する]を指す.典型的な血管性頭痛[偏頭痛]や筋緊張性頭痛は除く).発汗過多,感覚異常(手根管症候群を含む),関節痛のうち2つ以上の臨床症状がみられる場合に臨床的活動性ありと判断する.
注3:IGF-1値は,栄養障害,肝疾患,腎疾患,甲状腺機能低下症,コントロール不良の糖尿病などが合併している場合には底値を示すことがあるので,判定に注意を要する.

【長期follow upの注意点】
■MRI
 手術後,3ヶ月~半年後など比較検討が可能なように参照用基礎データとして撮影する.
 年に1回程度のMRI撮影を行う.

■GH,IGF-1
 薬物治療を継続している場合は定期的測定を行って,随時GHは1ng/mL未満かつIGF-1は基準値内を目指す.

■脱毛
・治癒切除後,あるいは薬物治療でコントロール良好な場合,しばしば著しい頭髪の脱毛が認められる.
・毛根におけるIGF-1の低下が原因と考えられる.
・脱毛は次第に回復することが多いが,なかには遷延する例もある.

■術後のAGHDの合併
・治癒切除したアクロメガリーの約10%に重症型のAGHDを合併し,一部で易疲労感・うつなどの症状を呈する.
・少量のGH補充治療が有効.

■大腸ポリープ
 大腸ポリープの既往があるアクロメガリーでは,下垂体腫瘍の治癒切除後もポリープの発生率は依然高く,定期的な内視鏡検査が必要.

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