先端巨大症 acromegaly

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なすび医学ノート

下垂体性巨人症

個人的なまとめノートで,医療情報を提供しているわけではありません.
診療は必ずご自身の判断に基づき,行ってください.
当ブログは一切の責任を負いません.

成長ホルモン(growth hormone;GH)の過剰により,特有の顔貌や体型および代謝異常をきたす疾患.

骨端線が閉鎖する以前に発症すると,身長の著明な増加をきたし,下垂体性巨人症(gigantism)と診断される.
骨端線が閉鎖した後では,先端巨大症となる.

適切な治療が行われない場合,一般人に比べ心血管系や呼吸器合併症のため約10年平均寿命が短いことが示されている.

関節痛,手根管症候群,睡眠時無呼吸症候群,頑固な頭痛などは患者のQOLを著しく損なう.

糖尿病についても罹病期間が長いと,不可逆性の糖尿病になる.

早期発見と適切な治療の選択が非常に重要!

  1. おすすめサイト
  2. 疫学
  3. 原因
    1. GH産生下垂体腺腫
    2. 遺伝性GH産生下垂体腺腫
    3. 稀な原因
    4. 高プロラクチン血症を伴う場合
  4. 病態
    1. 関節痛・関節炎
    2. 手根管症候群 carpal tunnnel syndrome
    3. 心疾患
    4. 内分泌代謝障害
    5. 多結節性甲状腺腫
    6. 腫瘍圧迫症状
    7. 大腸ポリープ
    8. 睡眠時無呼吸症候群
    9. 不安神経症的な性格
  5. 症候
    1. 身体的特徴
    2. 一般検査
  6. 病理
  7. 診断
    1. 内分泌検査
      1. 成長ホルモン GH
      2. インスリン様成長因子-1 insulin-like growth factor;IGF-1
      3. その他のホルモン基礎値
    2. 負荷試験
      1. 75gOGTT
      2. TRH試験,LH-RH試験,CRH試験(3者同時負荷試験でも可)
      3. ブロモクリプチン負荷試験
      4. オクトレオチド(サンドスタチン®)負荷試験
    3. 画像診断
      1. 下垂体MRI
      2. 頭部X線写真(側面像)
      3. 手指X線写真
      4. 左右heel pad軟線撮影
    4. 先端巨大症・下垂体性巨大症の診断の手引き:2018年度改訂
  8. 治療
    1. 治療効果判定
    2. 高齢者(70歳以上)
  9. GH分泌過剰の改善
    1. 手術療法
      1. 術後検査
      2. 治癒基準
      3. 術後のAGHDの合併
    2. 薬物療法
      1. コントロール基準
      2. ソマトスタチンアナログ synthetic somatostatin analogue;SSA
        1. 酢酸オクトレオチド
        2. ランレオチド  lanreotide
        3. パシレオチド pasireotide
      3. ドーパミンアゴニスト
        1. ブロモクリプチン
        2. (カベルゴリン  cabergoline)
      4. GH受容体拮抗剤
        1. ペグビソマント pegvisomant
    3. 放射線療法
      1. 治癒基準
  10. 補充療法
  11. 合併症に対する治療
      1. 大腸内視鏡
      2. 甲状腺超音波
      3. 心臓超音波
      4. 視力・視野検査

おすすめサイト

間脳下垂体機能障害の診断と治療の手引き(平成30年度改訂)
http://www.acromegaly-center.jp/medical/pdf/treatment_guidance.pdf

アクロメガリー広報センター
http://www.acromegaly-center.jp/

疫学

有病率は50~70人/100万人,発症率は3~4人/100万人/年.男女ほぼ同数か,女性にやや多い.

40~50歳で診断されるケースが多く,男女差・人種差はない.

身体の変化はゆっくり進行するため,患者本人は加齢変化と思っていることも多く,発症してから診断に至るまで10年前後と長い例が多い.

糖尿病では,1000~2000例に1例の割合で先端巨大症が隠れている計算となり,糖代謝異常もしくは糖尿病患者でIGF-1値からスクリーニングするのが効率的.

日本における先端巨大症患者の死亡原因は,悪性腫瘍(23%,一般人口の約1.5倍),脳血管障害(18%),心疾患(15%),呼吸器疾患(10%),その他(34%).死亡時平均年齢は59歳.

原因

GH産生下垂体腺腫

・99%以上を占める.そのうち,10~40%にGNAS(Gsα)の体細胞変異を認める.
・Gsαがモザイク変異のMcCune-Albright症候群に伴う場合がある.

遺伝性GH産生下垂体腺腫

まれに家族性のものとして,多発性内分泌腫瘍Ⅰ型(MENⅠ変異),Carney complex(PRKARIA変異),家族性先端巨大症や家族性下垂体腺腫(一部にAIP変異)がある.

稀な原因

・GHRH産生腫瘍(視床下部ガングリオサイトーマ)

・異所性GHRH産生腫瘍(気管支/消化管/膵内分泌腫瘍,副腎腺腫,褐色細胞腫,甲状腺髄様癌,肺小細胞癌)

・異所性GH産生腫瘍(膵内分泌腫瘍,悪性リンパ腫)

高プロラクチン血症を伴う場合

下垂体茎の圧迫によるものと下垂体腺腫細胞からGHとともにプロラクチン(PRL)が同時産生される場合(mammosomatotroph adenoma,mixed GH and PRL cell adenoma,acidophilic stem cell adenoma)がある.
・電顕ではdensely granulatedとsparsely granulated somatotroph adenomaに大別され,後者はfibrous bodyが光顕レベルでサイトケラチン染色によりドット状に染色される.

病態

GHの作用のほとんどはインスリン様成長因子(IGF-Ⅰ,ソマトメジンC)を介して発現される.

それ以外に,脂肪細胞,軟骨細胞や筋肉細胞などの分化・誘導というGH特異的な直接作用もある.

IGF-Ⅰは肝臓,軟骨細胞,筋肉,腎臓など生体内の多くの組織で産生され,その局所で増殖因子として作用する.

関節痛・関節炎

・約半数に生じる,初発症状となることもある.
 関節軟骨の不均等な増殖の結果,関節が不安定になり,機械刺激がさらに加わり,骨棘や変形をきたす(hypertrophic arthropathy).

手根管症候群 carpal tunnnel syndrome

手のしびれ,坐骨神経痛,末梢性の感覚運動神経障害

心疾患

高血圧・心肥大・心筋症・心不全

・中期では両室肥大心となり,拡張不全の結果,心拍出量の低下や相対的冠血流の低下が生じる.
 間質組織の浮腫・細胞浸潤・線維化も生ずる.
 一方,伝導障害も合併し,心室性の期外収縮などの不整脈もしばしばみられる(40%).
 さらに左心室肥大に伴って,大動脈弁閉鎖不全(30%)と僧帽弁閉鎖不全(5%)を生ずる.
 末期では拡張性の心不全をきたす.
 初期であれば,GH過剰を正常化すると,初期であればその進行を阻止したり,ある程度回復することが可能.

内分泌代謝障害

糖尿病,脂質異常,性欲低下,不妊・無月経,乳汁分泌や女性化乳房

・GHがインスリン作用と拮抗するため,耐糖能低下(35~50%)や糖尿病(40~56%)を引き起こす.
 筋肉でのインスリン受容体後の過程で,インスリン作用を阻害する.GHはGLUT1の発現を抑制し,骨格筋や肝での糖利用を低下させる.
 また,脂肪分解作用を有し,遊離脂肪酸の血中濃度を高め,glucose-fatty acid cycleを介して糖の代謝を抑制する.

・GHの脂肪分解促進と中性脂肪分解抑制により,血中の遊離脂肪酸と中性脂肪が増加する.

・GH産生腺腫からのプロラクチン同時産生あるいは下垂体茎や視床下部の圧迫に伴う二次的な高プロラクチン血症をきたす.

・増大した腫瘍が正常のLH/FSH細胞を直接に圧迫する.
→高頻度で月経異常や性腺機能低下症をきたす.
→腫瘍がさらに増大すると,TSHやACTH分泌低下を生じる.

多結節性甲状腺腫

・ほとんどで甲状腺機能は正常.甲状腺機能亢進症を呈する場合はTSH産生腺腫の合併や機能性甲状腺腫の合併を考える.

腫瘍圧迫症状

頭痛,視野障害

・GH産生腺腫の75%が腫瘍径1.0cm以上のマクロアデノーマ(macroadenoma)であることや,本頭痛が腫瘍径1.0cm未満の微小腺腫(microadenoma)でも生じることから,腫瘍の硬膜浸潤や鞍隔膜の進展によるものと考えられている.
・腫瘍が鞍上部に及ぶにつれ,頭痛は増強し,視野障害・欠損は上外側1/4盲から,両耳側半盲へと拡大する.
 さらに上方進展し,鞍隔膜を破ると,頭痛はむしろ軽減するが,視野・視力障害はさらに悪化する.

大腸ポリープ

大腸癌のリスクが高い

睡眠時無呼吸症候群

上気道の構成成分である,舌,下顎骨の肥厚・変形,咽頭や喉頭部粘膜の浮腫による閉塞性.中枢性のSASが併存し,病初期より高頻度に合併する(50~70%).

不安神経症的な性格

症候

GH過剰による全身症状と下垂体腺腫としての局所症状に分けられる.

診断にあたっては,発汗過多,軽い顔貌の変化や先端部の肥大などに注目する.
顔貌変化の自覚はあまりなく,以前の写真と見比べる必要があり,発病初期や非典型例では顕著でないことがある.
・握手したときに手が大きくて,汗ばんでいる.
・靴や指輪のサイズの変化を尋ねる.

難治性高血圧やインスリン抵抗性の糖尿病が発見契機となることもある.

身体的特徴

身体の変化を自覚していないこともある

顔貌変化(97%)→眉弓部の膨隆,下顎前突,大きな鼻,口唇肥厚

巨大舌(75%),声帯の肥大,副鼻腔の拡大→低い声(こもった声・ふくみ声) deepening of the voice

手足の容積増大(97%),高身長

胸郭の樽状変形→相対的な気管・気管支の狭小化

発汗増多(70%),厚い皮膚,皮膚浸潤,Oily skin,疣贅の増大

月経異常(43%)

一般検査

血清P濃度上昇←腎尿細管におけるリン排泄を抑制する.

尿糖陽性(33%),空腹時血糖高値(39%),ブドウ糖負荷試験で境界型または糖尿病型の耐糖能異常(74%)を認める.

病理

・GHの分泌顆粒に富む好酸性のdensly granulated GH cell adenoma(DGA)と,分泌顆粒が少なくサイトケラチン染色にてfibrous bodyが観察される嫌色素性のsparsely granulated GH cell adenoma(SGA)に大別される.

・GDAは成長速度が遅い腫瘍で,50歳以上に多い.

・SGAはDGAに比べて頻度は低いが,若年性(特に女性)に多く,一般に腫瘍増殖が速い.

・SGAはTRH負荷に対する奇異性反応の頻度は低い,オクトレオチド(サンドスタチン®)に抵抗性を示す例が多いなどの特徴も認められる.

診断

内分泌検査

成長ホルモン GH

・GH基礎値は上昇するが,脈動的分泌のため,健常人でも空腹・睡眠・運動・ストレス等の刺激により最大20~30μg/L以上まで上昇しうる.
・健常成人の早朝空腹時血中GH値(基礎値)は概ね1.0ng/mL以下.一方,先端巨大症ではGH基礎値は大多数が2.5ng/mL以上を示し,腫瘍からの自律性GH分泌のため,日差変動や日内変動が小さくなる.

インスリン様成長因子-1 insulin-like growth factor;IGF-1

旧称ソマトメジンC

・IGF-1は健常者の年齢,性別基準範囲に照らして判定する.GHと異なり,日内変動がなく,GHの総分泌量を反映するため,ワンポイント採血での診断特異性はGH測定より高い.
・IGF-1は肝臓由来であるため,肝疾患では低下する.他に低栄養,腎疾患,甲状腺機能低下症,コントロール不良の糖尿病などが合併すると高値を示さないことがある.

基準値→https://test-guide.srl.info/hachioji/test/detail/003852102

その他のホルモン基礎値

・中枢性の甲状腺機能低下症や性腺機能低下症を合併することが多い.
→FT4,FT3,TSH,ACTH,コルチゾール,LH,FSH,遊離テストステロン(男性),エストラジオール(E2:女性)測定

・PRLの同時産生腫瘍が約1/4に認められる.
→PRL測定

負荷試験

75gOGTT

正常では抑制されるが,活動性先端巨大症ではほぼ全例で抑制されない(1.0μg/L以上)
正常域は血中GH底値0.4ng/mL未満

感度が高い検査のため,疑わしい場合には必須.

血中 GH値がTRH やLHRH刺激で増加(奇異性上昇)することや,ブロモクリプチンなどのドパミン作動薬で血中 GH 値が増加しないことがある.

奇異反応
GHが抑制されず,むしろ上昇を示す反応.
・糖代謝を悪化させる
・オクトレオチド,ブロモクリプチンへの薬物反応性が良好

注意点
・空腹時血糖が200mg/dLを超えるような糖尿病患者では行わない.
・糖尿病,肝疾患,腎疾患,甲状腺機能亢進症,褐色細胞腫,低栄養状態,思春期・青年期では血中GH値が正常域まで抑制されないことがある.
・現在のGH測定キットはリコンビナントGHに準拠した標準品を用いている.キットにより GH値が異なるため,成長科学協会のキット毎の補正式で補正したGH値で判定する.

TRH試験,LH-RH試験,CRH試験(3者同時負荷試験でも可)

・それぞれGHの奇異性上昇がみられる(約70%,約20%,数%).
*前値の2倍以上に増加した場合を奇異反応とする.
*神経性食欲不振症,うつ病,慢性腎不全でも奇異反応を認める.

ブロモクリプチン負荷試験

・ドーパミン作動薬剤のブロモクリプチンは健常人ではGH分泌を刺激するが,本症の70~80%では抑制する.
・プロラクチノーマ合併例ではGHとPRLを測定する.
・負荷後4~8時間後で最低値をとる.
*副作用:悪心・嘔吐などの消化器症状と起立性低血圧.転倒予防に内服後6時間は車椅子で移動する.

オクトレオチド(サンドスタチン®)負荷試験

・ソマトスタチンは血中GHを低下させるが,血中半減期が2~3分と短い.オクトレオチドはソマトスタチンの活性配列を持つ誘導体で,半減期が100~105分と長く,先端巨大症の治療薬として開発された.
 酢酸オクトレオチド(サンドスタチン®) 100μgを単回に皮下注射すると先端巨大症の70~80%で血中GHの低下がみられ,負荷後4~6時間で最低値をとる.
・腫瘍縮小効果も期待.

画像診断

下垂体MRI

・1cm以上のマクロアデノーマが多く,造影MRIが有用.
・典型的にはトルコ鞍内から鞍上に進展し,正常下垂体を圧排する腫瘍を認める.腺腫では等信号からやや高信号(iso~slightly high signal nodule)を呈し,ガドリニウムで造影するとless enhanced noduleを示す.造影のT1強調画像で正常下垂体は強く造影されるのに対し,腺腫は弱く造影されるので区別できる.
・SGAでは視神経を圧迫するような大きな腫瘍や,海綿静脈洞浸潤を伴うことが少なくない.
・腺腫内出血による嚢胞形成,empty sela(トルコ鞍空洞)となる場合がある.
 →拡大したトルコ鞍に沿って,弧状に菲薄化した正常下垂体の下方に腫瘍が認められる.
・GH産生腺腫は下方へ進展することが多い.T2強調画像で低信号を呈しやすい.
・正常下垂体の腫大(過形成)が疑われるときは異所性GHRH産生腫瘍を疑い,責任病巣の検索を行う.

頭部X線写真(側面像)

トルコ鞍の拡大および破壊,副鼻腔の拡大,外後頭隆起の突出,下顎角の開大と下顎の突出など

・前後径17mm以上,深さ13mm以上は異常
・トルコ鞍の風船様拡大(ballooning)や破壊
・トルコ鞍の二重化(double floor)

手指X線写真

手指末節骨のカリフラワー様肥大変形(花キャベツ様肥大変形)

左右heel pad軟線撮影

足底部軟部組織厚heel padの増大(22mm以上)を認める.

正常値は22mm未満.

先端巨大症・下垂体性巨大症の診断の手引き:2018年度改訂

先端巨大症の診断基準
確実例:ⅠのいずれかとⅡの全てを満たすもの

ブドウ糖負荷で GH が正常域に抑制される場合や,臨床症候が軽微な場合でも,IGF-1が高値の
症例は,画像検査を行い総合的に診断する.

下垂体性巨大症の診断基準
確実例:ⅠとⅡの全てを満たすもの.
ただし,脳性巨人症ほか他の原因による高身長例を除く.

Ⅰ.主症候(先端巨大症)
*発病初期例や非典型例では症候が顕著でない場合がある.
1.手足の容積の増大
2.先端巨大症様顔貌(眉弓部の膨隆、鼻・口唇の肥大、下顎の突出など)
3.巨大舌

Ⅰ.主症候(下垂体性巨人症)
著明な身長の増加:発育期にあっては身長の増加が著明で,最終身長は男子185cm以上,女子175cm以上であるか,そうなると予測されるもの
*年間成長速度が標準値の 2SD 以上.なお両親の身長,時代による平均値も参考とする.先端巨大は発育期には必ずしも顕著ではない.

Ⅱ.検査所見(共通)
1.成長ホルモン(GH)分泌の過剰→血中GH値がブドウ糖75g経口投与で正常域まで抑制されない.
2.血中 IGF-1(ソマトメジン C)の高値.
3.MRI または CT で下垂体腺腫の所見を認める.
*明らかな下垂体腺腫所見を認めない時や,ごく稀にGHRH産生腫瘍や異所性GH産生腫瘍の場合がある.

Ⅲ.副症候および参考所見(共通)
1.発汗過多
2.頭痛
3.視力・視野障害
4.月経異常
5.睡眠時無呼吸症候群
6.耐糖能異常
7.高血圧
8.不正咬合
9.変形性関節症、手根管症候群
10.頭蓋骨および手足の単純 X 線の異常

治療

治療の目的は,GHの過剰分泌を是正して,軟部組織の肥大など可逆的な臨床症状を軽減し,合併症の進展を防ぐこと,下垂体腺腫に基づく症状を改善することにある.

①正常な下垂体機能を損なうことなく,腫瘍を除去もしくは退縮
②腫瘍による周辺正常組織への圧迫・障害,疾病の症候の是正・除去
③一般人口の死亡率までの低減

年齢,活動性,合併症の程度,腫瘍の大きさと位置,治療の持続性,費用対効果,副作用などを十分に考慮したうえで,個々の症例に応じた治療を選択することが重要である.

治療効果判定

まず血中 IGF-1が年齢・性別基準範囲内となったか否かで判定し,薬物療法以外ではブドウ糖75g経口投与後の血中GH底値とともに判定する.

部分寛解・コントロール良好の場合
定期的に観察し,治療効果を再判定する.
合併症などを評価して,経過を観察,治療法の変更・追加を考慮する.

非寛解ならびにコントロール不良の場合
症状や合併症などを評価するとともに,治療法の変更・追加を考慮する.

手術・放射線治療後に再発が疑わしいときはブドウ糖負荷試験を行うとともに,MRIで残存腫瘍や再発腫瘍を探索する.

高齢者(70歳以上)

・慢性の頭痛,関節痛などQOLを低下させる症状があったり,高血圧や糖尿病の治療に難渋している場合は,高齢者であっても積極的に治療すべき.
・非高齢者と同様に手術療法を第一選択とするが,手術が難しい症例も多いと考えられるので,手術困難症例ではプライマリー治療として薬物療法の導入を積極的に考慮する.
・薬物療法ではGHおよびIGF-1値が正常範囲まで改善されることにこだわらず,症状の改善がみられる程度の用量を使用でもよいかも.患者の負担が治療のメリットを上回るようであれば,中止するのも選択肢.

GH分泌過剰の改善

手術療法,薬物療法,放射線療法

手術療法

禁忌がない限り,手術療法が治療の原則.早期発見,早期診断により,腫瘍がトルコ鞍内にとどまっているうちに手術を行うことが望ましい.

経蝶形骨洞下垂体腺腫摘出術(transphenoidal adenomectomy:Hardyの手術)が第一選択で,熟練した脳神経外科専門医による内分泌的治癒率は70%程度である.
・上の歯の付け根の口腔粘膜に横に2cm程度切開し,鼻腔の裏側に相当する部分に入る.鼻の粘膜を左右に圧排し,特殊な鼻鏡を挿入する.手術用の顕微鏡をセットし,蝶形骨洞を開く.被膜外剥離,en bloc摘出.

手術の成功率は下垂体腺腫の大きさと海綿静脈洞浸潤の程度による.腺腫が小さいうちに早期診断し,治療することが最も重要.

腺腫と周囲前葉の境界部の構造は,肉眼的にも組織学的にも各症例により大きく異なる(単純被膜型,線維化浸潤型,前葉圧排型,前葉置換型).

組織学的に真の被膜はないが,仮性被膜(外科的被膜)を用いた被膜外切除は根治性の高い摘出(機能性腺腫では内分泌治癒)が期待できる.
・ただし,仮性被膜は全例,全周性に認めるわけではなく,仮性被膜にこだわりすぎると周囲前葉組織の損傷・犠牲が大きくなることに留意.

腫瘍が大きい場合は,術前にオクトレオチドを投与したうえで手術を行う場合もある.

術後検査

腫瘍が治癒切除かどうか,正常下垂体機能が温存されているかどうかがポイント.

75gOGTTは,基本的には術後1~4週間後に実施する.
・治癒基準を満たしていなければ,速やかに治療を開始する.
・治癒基準のGH値は日本では1.0ng/mL未満,海外では0.4ng/mLと異なるため,GH値が0.4~1.0ng/mLの症例では,他の合併症を考慮して治療方針を決める.

術後すぐにはIGF-1は正常化しないことがあるので,IGF-1の判定は術後3~6か月で行う.

75gOGTTによるGHの抑制の有無,IGF-1の正常化の有無,3者負荷試験でのGH奇異性上昇が消失しているかどうかを確認する.

術後3~6ヶ月に測定したGH値,IGF-1値に乖離がある場合,GH値が軽度高値,IGF-1値が正常値であれば様子をみる.反対にIGF-1が高値であれば治療を開始する.

下垂体機能低下の有無も評価.

予後判定/補助療法選択の一助となる組織検査:
1)組織形の確認:denselyかsparselyか?他の特殊なタイプか?
2)増殖能の評価(Ki-67)
3)各receptor発現の評価
4)MGMT発現やAIP遺伝子異常の評価

*再手術の適応
・若年者では長期間GH過剰に曝される可能性が高いことから,摘出可能な残存腺腫があれば再手術も勧める.

治癒基準

術後は3ヶ月後以降に評価を行い,寛解の場合,定期的(1年以内は3~6ヶ月,1年以後は6~12ヶ月ごと)に経過を観察する.

臨床的活動性
本症に起因すると思われる頭痛(発症時期,頑固さ,酢酸オクトレオチド著効などから判断する),発汗過多、感覚異常(手根管症候群を含む),関節痛のうち2つ以上の臨床症状がみられる場合に臨床的活動性ありと判断する.
*典型的な血管性頭痛(偏頭痛)や筋緊張性頭痛は除く.

1)寛解:IGF-1 値が年齢・性別基準範囲内 and ブドウ糖75g経口投与後の血中 GH 底値<0.4ng/mL and 臨床的活動性を示す症候がない.

2)部分寛解:1)および3)のいずれにも該当しない

3)非寛解:IGF-1 値が年齢・性別基準範囲を超える and ブドウ糖75g経口投与後の血中GH底値≧0.4ng/mL and 臨床的活動性を示す症候がある.

術後のAGHDの合併

・治癒切除したアクロメガリーの約10%に重症型のAGHDを合併し,一部で易疲労感・うつなどの症状を呈する.
・少量のGH補充治療が有効.

薬物療法

手術禁忌例,手術後コントロール不良,手術により十分な腫瘍摘出ができない場合.

治療開始前に薬剤に対するGH抑制効果(持続時間や抑制度)をあらかじめ調べておくのがよい.

第一世代SSAの抵抗因子は,SSTR2低発現,SG type,AIPなどであり,多くは外科治癒困難例と重なる.選択には腫瘍組織型,受容体発現を考慮する.

残存腺腫に対する永続的効果は通常期待できない.

いずれの薬物治療でも長期投与に伴う副作用に注意する.

単独の薬物療法でコントロールが不良の場合には併用療法についても検討する.

2009年10月から特定疾患治療研究事業の対象となり,患者の医療費負担はかなり軽減された.

コントロール基準

血中 IGF-1,GH値を1~3 か月ごとに検査する.
*薬物療法中の評価にブドウ糖負荷試験は用いない.

IGF-1値の正常化がより重要.
GH値は変動することが多く複数回の測定で判断する.
一部の症例でGH値の乖離を示す症例があり,その場合には臨床的活動性を含め総合的に判断する.

1)コントロール良好:IGF-1 値が年齢・性別基準範囲内 and GH受容体拮抗薬以外で治療を行われている場合はGH値<1ng/mL and 臨床的活動性を示す症候がない.
*GH受容体拮抗薬で治療中には,投与薬剤が測定系において交叉反応性を示す.

2)コントロール不良:上記以外
    

ソマトスタチンアナログ synthetic somatostatin analogue;SSA

酢酸オクトレオチド

ソマトスタチンアナログ.視床下部から分泌されるペプチドホルモンで,脳下垂体からの成長ホルモンの分泌を抑制する.
有効率は70%以上で,腫瘍の縮小効果もある.

オクトレオチド負荷試験でGHがよく低下した症例では治療効果が期待できる.

副作用は開始時の下痢で,ラックビー®やロペミン®で対応.白色便もみられるが,文献では2ヶ月で治まるとの報告が多い.

胆石が発現しやすいため,半年~一年毎の腹部エコーが推奨されている.ウルソ®が有効(予防的に使用する人も).

インスリン分泌を抑制するため,糖尿病の悪化には注意が必要(食後高血糖).悪化を認めた場合は,ペグビソマント治療への変更を考慮.

2014年6月30日よりサンドスタチンLAR®筋注用キットを新発売.懸濁性の向上,維持のため,分散液を改良(逆さにしたり,震盪してもOK).

一定量の薬物を長時間持続的に放出させるマイクロスフェア型注射剤.マイクロスフェア内部に専用分散液が侵入すると,内包されている薬物が拡散し,28日以上にわたって放出される
→投与直前に懸濁する必要がある.

酢酸オクトレオチド皮下注製剤
1 日当たり 100~300 μg、2~3 回に分けて皮下注射.

酢酸オクトレオチド徐放性製剤
サンドスタチンLAR®10mg,20mg,30mg:筋注
①まず20mgを4週毎に臀部に筋注する.
②臨床症状の改善度,副作用の有無,GH,IGF-1値を測定し,病態に応じて投与量を10~40mgで調整し,4週毎に投与する.
③20mgから30mgへの増量は比較的躊躇なく行うが,30mgから40mgへの増量は躊躇することが多い.

ランレオチド  lanreotide

ソマトスタチン-14の活性中心を残し,アミノ酸の置換や,D型異性体を用いることで長時間作動性を実現.

高濃度溶液中ではナノチューブ構造によりゲル状であるものの,生体内ではデポを形成して徐放化が可能となった.

Tmaxが投与後6時間,半減期が28日.ウォッシュアウト期間が比較的短く済む.

投与間隔を長くできる可能性があることに加えて,1回の投与用量が少ないこと,さらにあらかじめ薬剤が注射器に充填された状態で包装・製品化されているため(プレフィルドシリンジ),投与前の調整操作が不要となり,患者および医療従事者の負担を軽減し,良好なアドヒアランスを期待できる.

ランレオチド酢酸塩徐放性製剤 ソマチュリン®皮下注
4週間に1回,60~120 mgを臀部深部皮下注射.
①初回投与量を90mgと定め,4週毎に3ヶ月投与,GH,IGF-1値を測定し,病態に応じて,投与量を60~120mgで調整し,4週毎に投与する.副作用などの場合は減量とする.
②60mgまたは90mgで良好で安定した状態を示す患者は,120mgに変更し,投与間隔を8週毎,6週毎に延長できる場合がある.

パシレオチド pasireotide

GH産生腺腫の多くは,ソマトスタチン受容体サブタイプの2と5(SSTR2,SSTR5)を発現している.

オクレオチドとランレオチドはSSTR2に親和性が強く,SSTR5に対しては弱いが,パシレオチドはSSTR1~3,5に幅広く親和性を持つため,その効果が期待されている.

パシレオチドパモ酸塩徐放性製剤(第Ⅱ世代)
4週間に1回,20~60 mgを臀部筋肉内注射.

ドーパミンアゴニスト

ブロモクリプチン

1日当たり 2.5~15 mg,2~3 回に分けて食直後に経口投与.

(カベルゴリン  cabergoline)

先端巨大症には保険適応がなく,プロラクチノーマ or 高PRL血症の合併例で適応となる.

一般的には,術後の補助療法として1~3mg/週を,単独あるいはオクトレオチドと併用して用いられる.

プロラクチノーマ合併例でより効果が高い傾向がある.

カサバール®
1日当たり2.5~15 mg,2~3回に分けて食直後に経口投与する.

GH受容体拮抗剤

ペグビソマント pegvisomant

オクトレオチドやカベルゴリン治療が奏功しない症例に対して,単剤あるいは併用して用いる.

サンドスタチンLAR®の併用により,投与量や投与回数を減らすことが試みられている.

IGF-1正常化率は一番高く,糖尿病を悪化させない.

問題点は,高価であること,腫瘍の縮小効果はなく,GHはむしろ上昇して腫瘍が増大する可能性があること.
→GHは治療の指標にならない.

使用開始後6ヶ月後,以降,年に1回はMRIを撮影する.

ソマバート®
1日1回,10~30 mgを皮下注射.
①初日に40mgを皮下注射
②以降10mg/日を継続,IGF-1値を1ヶ月毎に測定し,30mg/日を上限に5mgずつ適宜漸減する.
③自己注射を指導する(自宅の冷蔵庫に保管スペースが必要).

放射線療法

薬物療法で症状の改善が得られない場合.腫瘍サイズ増大の抑制ができる.

局所腫瘍制御のため定位放射線照射(γナイフ,サイバーナイフ)が行われ,従来の外照射に比べ良好な治療成績が得られているが,放射線障害による下垂体機能低下症が問題となる.
・視神経から5mm以上離れていれば,照射可能.
・寛解基準が施設により異なるが,定位照射により45%,薬物治療と併用で60%が平均的な寛解率.

治癒基準

1)寛解:IGF-1 値が年齢・性別基準範囲内 and ブドウ糖75g経口投与後の血中 GH 底値<0.4ng/mL and 臨床的活動性を示す症候がない.

2)部分寛解:1)および3)のいずれにも該当しない

3)非寛解:IGF-1 値が年齢・性別基準範囲を超える and ブドウ糖75g経口投与後の血中GH底値≧0.4ng/mL and 臨床的活動性を示す症候がある.

補充療法

尿崩症や下垂体前葉機能低下症を伴う場合には,それぞれに応じた薬剤による補充を行う.

合併症に対する治療

糖尿病,高血圧症,脂質異常症,心疾患,変形性関節症,睡眠時無呼吸症候群,悪性腫瘍(特に大腸癌・甲状腺癌)のような合併症を伴うことが多いので対症的に治療する.

心血管障害に関連して動脈硬化性血管病変や心疾患の検査を定期的に行い,高血圧,糖尿病,脂質異常症を良好にコントロールする.悪性腫瘍については標準的スクリーニングが行われるが,先端巨大症の診断時に,上部および下部消化管の精密検査を実施しておく.

大腸内視鏡

ポリープや大腸癌の頻度が高い.40歳以上では原則として実施を勧める.

大腸ポリープの既往があるアクロメガリーでは,下垂体腫瘍の治癒切除後もポリープの発生率は依然高い.

甲状腺超音波

高率に多結節性甲状腺腫を合併する.甲状腺癌の合併頻度が高いとの報告もある.

心臓超音波

心肥大,弁膜症,心筋症を合併する頻度が高い.

視力・視野検査

視力低下

視野異常の有自覚症状,またはMRIで視神経の圧排が疑われる場合検査

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