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全ての血球の減少と骨髄の細胞密度の低下(骨髄低形成)を特徴とする難治性の血液疾患.
ほとんどが,造血幹細胞に特異的な細胞障害性T細胞によって造血幹細胞が壊されることにより発症する.
診断
網赤血球数を含む全ての血球の減少があり,LDの上昇や凝固線溶系の異常などのその他の検査で造血器腫瘍や重篤な感染症を疑う所見がない場合,通常疑う.
診断基準
以下の①~③を満たせば,診断できる.
①好中球<1500/μL,Hb<10g/dL,血小板<10万/μL(海外では<5万/μL)の3項目のうち,少なくとも2項目を満たす.
②骨髄の細胞密度が25%未満の低形成
③骨髄に芽球の増加,異形成所見,明らかな染色体異常がない.
特に好中球が500/μL未満,網赤血球数4万/μL未満,血小板数2万/μL未満の2項目以上を満たす重症型では骨髄が著しい異形成を示すため,AAと診断することは比較的容易.
この診断基準では,軽症・中等症AAを確定するのが難しい.
鑑別診断
血球減少の程度が比較的軽症・中等症例では,さまざまな疾患との鑑別が必要となる
骨髄異形成症候群(MDS)
特に芽球や環状鉄芽球の増加がないMDS-single lineage dysplasia(MDS-SLD)とMDS-multilineage dysplasia(MDS-MLD)
→低リスクMDSと診断基準が重複しているため,どちらとも診断できる例が少なくない.
→MDSと診断した場合不利益が大きいため,迷ったらできるだけAAと診断する.
特発性血小板減少性紫斑病(ITP)
ITPの診断には骨髄検査が必要とされていないため,血小板減少のみの場合はITPと診断されることが多い.
→放置されてしまうと治療抵抗性になってしまうため,成因が消費亢進によるものか,産生低下によるものか鑑別を行う.
造血不全の病態鑑別に有用な検査所見
染色体検査
免疫機序による骨髄不全→del(13q)の単独異常
どちらとも言えない→trisomy 8,del(20q),割合の低い意義不明の染色体異常
前白血病状態→del(7/7q)と,その他の割合の高い染色体異常
骨髄におけるCD34陽性細胞の増加やCD42b陽性細胞の増加
免疫機序による骨髄不全→なし
どちらとも言えない→なし
前白血病状態→あり
末梢血におけるWT1メッセンジャーRNAコピー数の増加(>600)
免疫機序による骨髄不全→なし
どちらとも言えない→ありorなし
前白血病状態→あり
遺伝子変異(保険適応外)
免疫機序による骨髄不全→6pUPD,PIGA,BCOR,BCORL1
どちらとも言えない→頻度が低い意義不明の遺伝子異常
前白血病状態→DMNT3A,ASXL1,RUNX1,TP53,SETBP1,WT1,その他の頻度の高い遺伝子変異
微小なものを含むPNH型血球の増加(保険適応外)
免疫機序による骨髄不全→あり
どちらとも言えない→なし
前白血病状態→なし
PNH(paroxymal noctural hemoglobinuria)型血球を検出するフローサイトメトリー検査は,感度の低い検査であるため,造血不全における免疫病態の診断に必要な0.1%未満のPNH型血球を正確に検出することができない.
→fluorescent-labeled inactive toxin aerolysin(FLAER)を用いた高感度フローサイトメトリーであれば,検出に検出することができる.
HLAクラスⅠ欠失血球(保険適応外)
免疫機序による骨髄不全→あり
どちらとも言えない→なし
前白血病状態→なし
血漿トロンボポエチン値>320pg/mL(保険適応外)
免疫機序による骨髄不全→あり
どちらとも言えない→あり or なし
前白血病状態→なし
血小板数とは不釣り合いな未成熟血小板割合の上昇(保険適応外)
免疫機序による骨髄不全→なし
どちらとも言えない→なし
前白血病状態→あり
治療
従来は,輸血が不要になれば「成功」であったが,現在では,観血的処置が必要となった場合でも血小板輸血を受ける必要がない(血小板数≧5万/μL[妊娠希望女性は10万/μL以上])が当面の目標.
アルゴリズム
ステージ1,2a
まずシクロスポリンを開始し,反応の有無をみる.
輸血が必要なステージ2b以上
患者がHLA適合同胞ドナーを有する40歳未満の場合→骨髄移植
それ以外の場合→ATG・CsAと,TPO-RAのエルトロンボパグの併用療法を行う.
シクロスポリン cyclosporine A;CsA
従来,重症AAにしか使用できなかったが,2017年からは軽症・中等症AAに対しても使用できるようになった.
血球減少の中でも血小板数の程度が最も強く,骨髄巨核球が減少している場合は,ほとんどが免疫病態による造血不全.
→AAの診断基準を満たす場合は,直ちにAAの特定疾患申請を行った上で,3.5mg/kg程度のCsAを4~8週間投与して,血小板数や網赤血球の増加の有無をみることが望ましい.
AAに有効な少量(3.5mg/kg/日)であれば,不可逆的な腎障害を起こすことはまずなく,患者の忍容性も良好.
効果を発揮させるためのモニタリングは,内服後2時間目の血中濃度(C2)を用いて行い,これが600ng/mL以上となり,かつ血清Crが治療前後の150%を超えないように投与量を調整する.
抗胸腺細胞グロブリン antithymocyte globulin;ATG
トロンボポエチン受容体作動薬 thrombopoietin receptor agonist;TPO-RA
エルトロンボパグ eltrombopag;EPAG
レボレード®
投与経路:経口
鉄キレート作用(抗腫瘍効果):強い
ATGとの併用:可能
消化器症状,肝障害,倦怠感などの副作用:比較的多い
皮膚の色調変化:100mg/day以上の投与例では頻度が高い
難治例に対する効果:(++)
ロミプロスチム romiplostim;ROMI
ロミプレート®
投与経路:週1回皮下注
鉄キレート作用(抗腫瘍効果):不明
ATGとの併用:現時点では不可
消化器症状,肝障害,倦怠感などの副作用:皮下注による局所痛を除けば少ない
皮膚の色調変化:なし
難治例に対する効果:(+++)?